鶏足寺跡を登り、とんがり山でラーメンを炊く
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平成18年9月3日(日) メンバー 私だけ
とんがり山(風早嶺) 258m
2万5千分の1地形図「龍野」を参照すること。
無性に山でラーメンを炊き
たくなった。眺めがよくて、安心して火を使える広さがある頂上で、できれば今までに登ったことのないルートでと、2週間悩み続けてしまった。実行前夜にもまだ決まらず、当日の朝ようやく、あの有名になりつつある「太陽公園」の西、国道29号線の東にそびえる「とんがり山」と決めた。そして登山ルートだが峰相山大池から北に谷を詰めると、峰相山へのまだ登ったことのない、あまりお奨めできない登山道があるらしい。
盛夏を過ぎて日差しも和らぎ、気温こそまだ30℃(姫路市の当日の最高気温は31.3℃)を越えるが、日陰に入ると涼しい(真夏と比べると)風が吹きぬけ、ようやく里山・低山の季節が巡ってきたようだ。
10:33
姫路市街から国道29号線を鳥取方面に進み山陽自動車道の高架の下を抜け、坂道を下りきると石倉交差点(姫路市街から来ると左へ「破磐神社・太市駅」の案内がある)だ。この交差点を急角度で右に曲がり欄干が水色に塗られた橋を渡るとすぐに稲根明神がある。その神社の東側に回り込むように狭い道へと入っていくと、峰相山大池の奥に石倉生産森林組合の倉庫があり、その敷地が釣人・ハイカーの駐車場として解放されている。自宅からコンビニに寄ってもわずか24分で着いてしまった。
注告!!
この池を含む上の三つの池は、マナーの悪い人が含まれていると判断したときには、釣り禁止の処置をする事になる。余暇を楽しむ善意の人も、釣り糸放置・ゴミ放置には目をつむる事なくすすんで、持ち帰って下さい。
余暇を大事にする代表より
石倉自治会長
石倉農区長
石倉生産森林組合長
ハイカーも気をつけないと登山禁止になるかも知れない。
登山口を見つけるまで50分
10:41
準備を整え歩き始める。まずは田畑の広がる谷の西端の舗装道路を北へと進む。右手は稲穂が垂れ始めた水田、左手は手入れの行き届いた竹林だ。
10:46
道端に「石倉峰相山寺連景図」なる案内図があり『細谷・コベラ・東ぶれゲ谷・長尾・西ぶれゲ谷・寺ゲ地・堂ゲ谷・法師ゲ谷・僧谷・宮ゲ谷』と微細な谷や尾根に名前が付けられていることが分かる。
案内板のすぐ先、左側に峯相山登山口(神岩・大黒岩コース)への分岐があり「ようこそようこそ峯相の里山へ」と花壇に囲まれた屋根付きの案内板がある。広い駐車場といい案内板といい、地元の人がこんなにもハイカーを歓迎してくれるところはめったになく、ありがたいことだ。下山はここに下りてくることになるだろうが、さらに奥へと進む。
10:52
「峰相森林公園」の看板があり、道路には獣除けの扉が設けられている。その扉に面白い注意書きが付けられている。
注告
猪・鹿・常識人間以外の入山禁止
石倉生産森林組合
平成の森支配人
10:53
ここは「峰相森林公園」か「平成の森」のどっちなのだろうと、頭の中が???になってきたが、追い討ちをかけるように、右手一段下に車が30台は止められそうな広い駐車場が見えてきた。周囲の風景とミスマッチな近代的駐車場だ。
なんだなんなんだと下りいていくと、駐車場の入口には車止めがあり、まだ供用開始されていないが、案内板によれば姫路市が「石倉峯相の里」として整備している里山公園の駐車場だ。姫路市のHPを見ていると11月下旬に
豊かな自然と地域の特産物を生かした体験型の施設として、「石倉峯相の里」がオープンします。農家風の休憩舎や多目的広場、駐車場を備え、周辺の竹林、ため池、里山など恵まれた環境の下、自然や特産物に触れる機会を提供します。周辺で収穫したイモや果物などの特産物を使った料理教室や、昔の農具を展示するコーナーも。
として開園するとある。他所の里山公園のように周辺の山々へと登る遊歩道は整備されなさそうだが、里山公園マニアとしては開園日に行かないわけにはいかず、11月が待ち遠しい。
11:01
峰相上池の奥では「管理研修棟」が建てられつつある。屋根はできているが壁・内装はこれからだ。その研修棟の向かいには「峯竹釜 平成15年11月初焚」というレンガで出来た竹炭窯がある。
周辺には平成16年に建てられた「峯相創庫」や、芝生の広場の中には「農家風休憩舎」が建ち、小さな子供を連れた若夫婦のピクニックが似合いそうな風景が広がっている。
11:08
公園を通り過ぎ、雑木斜面の中に通された道路を行くと、左上方からザワザワと藪漕ぎの音がする。鹿かなとデジカメを取り出し電源を入れる間もなく、小鹿が10mほど前方の道に飛び出し、右下の雑木林へと走り抜けていった。残念ながら写真を撮ることは叶わなかった。
11:10
道路の終点は簡易トイレと開山堂のある駐車場所となっていて、ここまで車でも来ることが出来る。
さらに奥へと登る道の入口横に「峰相山鶏足寺古蹟由来」の石碑が建っている。
峰相山鶏足寺古蹟由来
峰相山と言うは東西両嶺相合う峰の様子から言う。鶏足寺と言うは釈迦十大弟子の迦業が入定した印度伽耶城の東西鶏足山に似ている処からで西峰の主峰は250mにして風早嶺と称し梢下に神岩大黒岩と名付くる奇岩等多く現出す。神功皇后三韓へ派兵の砌り新羅の王子を伴い帰朝す皇后帰洛の途次当国播磨に王子を留め給う王子此の山に草庵を結び十一面観世音菩薩を祭祀給うこれ即ち峰相山鶏足寺の起りなり。その後宮中にまで鈴声聞こえ錦繍金玉二丈五尺の幡降り下る斯くして奇瑞興り大いに発興す。即ち奈良朝には金堂講堂法華堂常行堂五大尊堂一切経堂鐘楼勧請神堂五重塔三重塔宝蔵及び僧房300余等々広壮なる寺観を誇る。平安初期より衰微の兆見え天正6年8月10日小寺氏により堂舎悉く焼亡さる。然して現在は堂塔伽藍の跡礎石若干残すのみ。尚竜野市誉田町井上の観音像は等寺焼亡の際難を免れし御本尊と推定される。当寺の縁起由来については峰相記播磨風土記播磨名所図絵等に詳述してある。
平成5年4月吉日 峰相観音講一同
滝行場では冷たい水が程よい水量で、思わず服を脱いで頭から打たれ修行したくなったが、今の時期ではそれでは修行ではなくただの気持ちのよい行水になってしまうことに気が付いた。真冬にもう一度来て、数百数千も抱え込んだ煩悩を振り払らわなくては。
千僧塚
一千数百年にわたり峯相山鶏足寺の十一面観世音菩薩をはじめ、峯相山有縁無縁の諸聖霊追福の為に光明真言の秘法を修せしめ永年にわたり守護されてきた貴人の墓として祀られてきたと伝えられ、三回拝むと鼻血がでると、いわれる程の力を持っていると、されてきました。
いつの頃から転倒し苔むす日々で長年放置されてきましたがこの度「千僧塚」として開眼供養し後世にその名を残さんと欲す。平成14年4月22日 観音講一同
11:22
駐車場から歩き始めて40分、どん詰まりの観音堂まで辿りついた。左手から車の登れる道が来ている以外に、お堂の裏側は獣除け柵があるだけで登山道らしきものを見出すことが出来ない。
ようやく登山開始、鶏足寺遺構へ
11:28
右往左往して登山道を探すこと6分、観音堂右後の柵に扉があることは気づいていたが、もう帰ろうかなと思い始めた頃その扉にマーキングの白紐が結ばれていて、そこが登山口になっていることにようやく気づいた。その扉への踏み跡はなく、盲点だった。
扉を開閉し柵を抜け、柵沿いに右手に5mほど進むと左手に『道』が現われた。なぜか柵の内側からでは、その道を見出すことが出来なかった。
11:40
10分ほど登っていくと、奥行きはあまりないが、右手へと延びる明らかな削平地に出た。鶏足寺跡だろうが、案内板や解説板はなく、僧坊の土台にしたのか上面が平らな石が散在している。削平地の中には踏み跡はなくルートは不明確になるが、黄色テープのマーキングが右手へと誘導しているように見える。
削平地の端までいくと行き止まりで、登れるような道を見出すことが出来ない。藪を無理やり漕いでいけば登れないこともないだろうが、今日は藪漕ぎの日ではなくラーメンを炊く日なのだ。どうしようかなと山側を探索していると、カラカサタケの幼菌と思われるものがニョキニョキと生えている。カラカサタケは食用になるので、ラーメンに入れて炊いてしまおうかと考えたが、笠が開いてなく明確に判別できず、もしかしたらカラカサタケに似た毒キノコの可能性もあるので止めておいた。
11:50
カラカサタケの列を追っていくと、トラロープが草薮の中へ延びているのを見つけた。削平地の中から延びていればすぐに見つかるものを、トラロープの存在を知らなかったので、目立つはずの黒黄の色が保護色のようで分かりづらかった。
ゆるやかな地形で水平なところにもトラロープが途切れずに張られている。今は草薮と化していていて、もしトラロープがなければルートを見極めることは不可能と思う。
11:54
トラロープに誘導されて草薮を進むと、石垣が現われた。高さは背丈ほどで幅は10mほどか。数百年前、はたまた千年以上前に組まれたと思われる。周辺は草薮に覆われているが削平地が連なっているようで、種々の遺構が隠されているに違いない。
12:01
さらに草薮を行くと、今度は石畳の道が現われた。写真では草に隠されて分かりにくいが幅は2m近く長さは20mほどもあったろうか。日本最古の寺院とも言われるこの鶏足寺跡が詳しい調査もされず、世に知れ渡っていないのは不思議な感じがし、調査できない理由でもあるのだろうか。
一般に鶏足寺跡と呼ばれる広場からとんがり山へ
12:07
最後は道を見失い黄色テープに誘導され登っていくと、一般に鶏足寺跡と呼ばれている二つの木造の祠と小さな五輪塔がある広場に登り着いた。予想外に時間がかかりお昼になってしまい小腹も空いてきたので、ラーメン炊きに失敗したときを思いコンビニで買ってきた「おにぎりセット」を食べる。
峰相山の最高標高地点はここではないが、登頂記念プレートが4枚ほど下がっていたので、いつもの通り公開する。
- 九十士 山歩会 加古川市 2003.12.22 大西泰治 森昌平 高橋寿
- 2003.9.15 はれ 揖保川町 安達
- 火の用心 H.O.K 2005
- H16.12.18(土) 長谷川博 (文太郎を偲ぶ会) 244m
12:24
とんがり山(風早嶺)を目指し南西へ延びる尾根へ入る。今は無き「山陽自然歩道」(打越から峰相山を通り林田町上伊勢へ抜けるここのルートは、後継者たる「近畿自然歩道」には入れてもらえなかった)が広場の北を通っていて、そこの分岐点の道標は「←上伊勢 ↓とんがり山方面 長尾・太陽公園→」となっている。
雑木林に挟まれて展望はからきしだが、ゆるやかな起伏のほどよい道が続いている。ここまででもそうだったが、季節がら数歩おきに蜘蛛の巣があり小枝で払い退けながら行くが、注意力が散漫になると顔に巣がベチャと張り付き、蜘蛛が襟首を走り回るという悲惨なことが起きてしまう。
12:41
この尾根で唯一の展望地「大黒岩」まで来た。大黒岩への入口には、左側に「←とんがり山・神岩方面」、右側に「←左 大黒岩 峯相山 右→」の案内がある。大黒岩に登れば大展望が得られるが、神が宿る岩に登るははばかれるため、今回もパス。
大黒岩からとんがり山の間はそれなりの起伏があり、シダが道を覆っているところもある。なお、私が写真を撮るのは一番快適な見通しのよい道か、一番ひどいところの両極端になる傾向があり、実際に歩いてみると写真ほどよい道でもなければ、悪い道でもないと思う。
今日のラーメンはうまかちゃん
13:07
とんがり山は地形図では分からないが双耳峰で256.7m四等三角点標石(点名:下伊勢)のある北側よりも、すぐ南側のピークの方が少し高いような気がする。
南ピークには「とんがり山 258m」の山名板が下がるだけで登頂記念プレートの類はなさそうだ。ただ周囲に張られているトラロープが目障りで、「これより外に行くと危ないよ」と言う意味なのだろうか。予定よりも遅れたが、南側ピークでラーメンを炊くことにする。
ガスストーブが全盛の昨今だが、四半世紀前に入手した「スベア123」ガソリンストーブをいまだに愛用している。ゴーゴーという勇ましい音をたてながらバーナーを真っ赤にして燃焼する姿が頼もしく、プレヒートが必要なことや、途中で消えてしまった時の再着火のしにくさがあるが、いまさらガスストーブを使う気にはなれない。
なぜか北海道で初めて食べた「うまかちゃん」が好きで、今回は豪勢ににぬきと焼き豚まで入れてしまった。出来上がる前に吹きこぼしてしまい火が消えたが、ガソリンの蒸気を盛大に吹き上げるストーブにライターで再着火する勇気がなく、蒸気の次はガソリンそのものが噴出し始めたのを眺めながら、少し固めのうまかちゃんをおいしく頂いた。
このとんがり山頂上は、何年か前には伝説の亀岩に乗っているとか、ハート岩とか西蛇ー台、東方台、願かけ熊手とか色々な案内板がそこかしこに立ち見どころ満載だったのだが、うたかたの夢の如く全て消え去ってしまい、今は静かなあるべき姿のとんがり山に戻っている。
神岩経由で下山
14:00
下山は南へ神岩経由で、駐車場近くの登山口へ下る。下り始めは名前の通りのとんがり具合から、もう以上はないというほどの最大激下りだ。傍らのトラロープを頼りに慎重に、一歩一歩下っていく。
激下りは10分ほどで、緩やかなシダ茂りまくりの道となり、正面に神岩が現われる。
14:15
遮るものがない大展望の神岩に着いた。南には播磨灘に浮かぶ家島が、振り返るととんがり山の頂上が近くで見てもとんがっている。いわれ書きが薄れて読みにくくなった「稲作の小泉」もしっかりと水をたたえている。何度来ても気持ちのよい神岩だ。
神岩はそのまま下れるが、あえて戻り巻き道を行き、再び急になった道を下る。急な道はすぐに終わり、またまたシダが生い茂る展望のない道がしばらく続く。
14:41
草薮の尾根を指して「←展望台」(かすれている)の案内があるところから、尾根を離れて東へと下る。少しはギザギザに道を付ければよいのに、真っ直ぐ麓へと下る道にはトラロープが張られているが、一回足を滑らせて尻餅をついてしまった。
14:58
下山。登山口の道標は文字が薄れ倒れていて役に立たず、マーキングもなく踏み跡は薄くどこから登ればよいか分かりづらいが「宮ガ谷1 管理者小野力男 石倉生産森林組合 火気注意」の表示板の正面から入ると、登山道に入ることができる。
15:04
石倉生産森林組合倉庫横の駐車場に戻る。汗まみれなので、開山堂まで車で行き滝行場で汗を流そうかなと考えていた。しかし、倉庫奥の「石倉峯相ホール」の前に衝立があり、その裏に屋外流し台がありバケツも用意されている。まるでここで行水をすると気持ちいいよと誘うようなお膳立てで、思わず服を脱いで冷たい井戸水(左は上水、右は井戸水)を頭からバシャバシャと浴びてしまった。生き返るようで気持ちよかった。本当に、ここ石倉はハイカーを歓待してくれるよいところだ。
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