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有馬から歩く魚屋道と大谷茶屋のおでん



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平成18年12月3日(日)  メンバー 私だけ

有馬温泉〜大谷茶屋のおでんと熱燗

2万5千分の1地形図「宝塚」、「西宮」を参照すること


有馬の友「神姫バス」

下の写真のバス、古臭そうに見えるが実は平成4年登録(神姫バス非公式総合案内所調べ)の車歴14年の、今が育ち盛りのバスだ。もしこの神姫バスがなければ私の六甲山通いは実現しなかったろう。

JR三ノ宮駅南から有馬温泉へは阪急バスと神姫バスの共同運航路線があり、乗車するバス会社の通勤定期券を持っていると土曜・日曜・祝日は680円の運賃が100円(同乗の家族は神姫バスは大人300円・子供150円、阪急バスでは大人100円・子供50円)になるという画期的な割引(環境定期券制度・エコ定期券制度)がある。ただバスの通勤定期は完全週休二日制だと、回数券を買ったほうが(6ケ月定期でも)安くなるので、この制度を利用している人を見ることは稀だ。

有馬の友、神姫バスの雄姿


今回のテーマは大谷茶屋のおでん

今回の山行の目的はただ一つ、高座ノ滝の大谷茶屋でおでんを食べることだ。なぜ今回の山行のテーマがおでんになったのか私にも分からないが、とにかくおでんだ。姫路ではおでんを生姜醤油で食べると報道されているのを聞いたのが源かもしれない。

そんなことはないだろうと生粋の播州人の妻その1に尋ねたら、「子供の頃からおでんは生姜醤油よ」と軽く受け流されてしまった。辛子派の私にはコペルニクス的転回の天変動地の出来事に、なすすべもなく「六甲山・おでん・六甲山・おでん」と口走りながら今回の山行が決まった。

芦屋から大谷茶屋に直行しても私にとっては、また播州野歩記にとっても無問題だが、それでは読者に申し開きができない。全て1回以上歩いたことがあるルートで新鮮味は全く感じられないが、有馬温泉からおでんを希求し高座ノ滝を目指すことにした。


有馬温泉から

三ノ宮駅を9時に発車したバスは定刻通りに9時40分に有馬温泉に着いた。紅葉の時期も終わりを告げ、ハイカーは少なく乗客は15人ほどとゆったりと座って居眠りをしているうちに着いてしまった。

とりあえず家族のお土産に三ツ森本店の丸缶入抹茶クリーム炭酸煎餅を買い込む。純粋な炭酸煎餅よりもこちらの方が家族には評判がよい。

10:03
恒例になった炭酸泉源公園での身支度を終え、いざ出発。「車両進入禁止、上り通り抜け不可、上り急勾配、約45°」の看板がある「タンサン坂」を登る。

炭酸泉源公園

10:10
かんぽの宿有馬(お風呂嫌いの私には30秒以上の入浴は苦行そのもので、高い入浴料を払って地獄の責め苦にあうのは趣味に合わないので、有馬の温泉に浸かる日はこないかもしれない)の前を過ぎると、魚屋道の入口はすぐだ。

魚屋道の入口

車でも十分登れそうな魚屋道の入口には、白ポールと蛇籠に石を詰めた障害物が置かれている。


通いなれた魚屋道

幅広のごく緩やかな道を行ったり来たりしながら登っていくが、何のためかショートカットルートの出入り口にはマーキングが付けられている。ショートカットを奨励しているのだろうか、斜面の崩壊を防ぐにはやめた方がよいと思うのだが。

ハイカーは少ない

紅葉の時期はすでに過ぎ、ハイカーの姿はちらほら見られるだけだ。時どき現われる、黄葉した木々が薄暗い北斜面を登る辛気臭さを和らげてくれる。あまり当てにはならない温度計は3度を示しているが、寒さは感じられない。

黄葉がきれいだが

どこにも紅葉はない

10:45
「←近道 有馬温泉 有馬稲荷神社」の案内が横たわる分岐を過ぎしばらく登ると、ようやく魚屋道にも日が差してきた。木々の種類も変わったようで明るくなった道を、となりの有馬三山を枝越しに眺めながらいく。

ようやく日差しが差しはじめ

雰囲気のよい道が続く

10:52
的場山の南、お経が刻まれた石碑を過ぎると心持ち路面が荒れだすが、ごく緩やかな広く歩きやすい道がさらに続いている。登山を目的に、この有馬側の魚屋道を選ぶとがっかりすること間違いなしで、いつになったら登山道が始まるのかと遊歩道を登っていくと最後は稜線を通る車道に出てしまうという困った道だ。

石碑の横を

11:05
ベンチが置かれ、有馬三山のどれか(湯槽谷山と思うのだが)が正面に見える。よし次は有馬三山だと見るたびに思うのだが、何度も登り下りしなければならず、おまけに番匠屋畑尾根という激登りが最後に待っているのを思うと、「水は低きに流れ、人は易きに流れる」という言葉通り今日のような楽な道を選んでしまう。「艱難辛苦汝を玉にす」の方向に進むと、最後はチョモランマに登る破目になりかねないので、これからも易きに邁進しようと思う。

いつか登ってみたいな有馬三山

ようやく少しだけ登山道という雰囲気になってきた、あくまでも雰囲気だけだ。かつてはこの辺りも完璧に手入れされていたのだろうが、ほんの少しだけ急なので雨水に路面が洗われてしまったのだろう。

ちょこっとだけ荒れた道

と、MTBに追い越されてしまった。歩く分には平坦な道とさほど変わらないが、MTBにとっては路面も悪く激急なのだろうか、必死にペダルを漕いで登っていく。

必死に登るMTB

今度はMTBが下ってきた。見た目は本当に楽しそうだが、山登りと同じで登りよりも下りの方がテクニックがいるのかもしれない。

ん、今度は押しのMTBに追い越された。MTBを押すと早く歩けるのだろうか、それとも私がただ単に歩くのが遅いせいなのだろうか。

僕は押していこう

またMTBに追い越された。今度は2台が次々と、緩やかで路面状態もよくすいすいと登っていく。だが「MTBも面白そうだな、よし次は折りたたみ自転車で魚屋道に挑戦だ」なんて露とも思わない。

4台のMTに追い越され、1台とすれ違った

11:37
いつの間にか吉高神社入口まで着いてしまった。一度目よりは二度目、二度目より三度目の方が早く感じると言うが本当だ。ここから路面が簡易舗装というか、これからの時期ここだけが凍結していて怖い思いをする道が稜線の車道まで続いている。

もうすぐ車道に出るな

11:40
稜線の道路脇には車は入れないが、小広い広場になっている。その昔はここまで登る路線バスがあったというからその転回地だったのだろうか。

ウーン、よい天気

11:47
最後の舗装道路をヒイコラ言いながら登り、ちょうどお昼に六甲最高峰の頂上に到着。すでに、南側から登ってきたのか大勢のハイカーが寛いでいる。

せっかく米軍のアンテナが1992年になくなったのに、最高峰には自衛隊のマイクロウェーブ中継鉄塔が立っている。表札ぐらい出しとけばよいと思うのだが、監視カメラなどの侵入警戒装置や柵内には有刺鉄線の障害物などで厳重に警護されている。

本日の昼食はコンビニの「もりもり俵弁当1」、「テリヤキチキンサンド」そしてペットボトルのお茶「はじめ一」の三品だ。ガスストーブと食材を担ぎ上げてこった料理をする人もいるようだが、天候の急変にも対処できる、時間がなくなったら歩きながらでも食べられるコンビニの簡単な弁当が最高だと自画自賛しながら美味しくいただく。

今日のお昼ご飯


さあ下りようか

下りる前に記念撮影をパチリしていると、近くの石に埋め込まれた「一等三角点 六甲山 ………」の解説板を三角点そのものだと勘違いしている人がいたので、「こっちが本当の三角点ですよ」と教えてあげたら、怪訝そうな顔をして「一等三角点と書いてあるし、こっちが本物だ」と言い張る。私の三角点標石に対する思いと、普通のハイカーの感覚の違いは想像以上のものがあるとショックを受けてしまった。

下山前に記念撮影をパチリ

六甲最高峰の頂上は広々として気持ちはよいのだが、その広さがわざわいして展望はあまりよくない。

頂上からはよく見えないな

景色が一番よく見えるのは、最高峰へ登り下りする簡易舗装道路かもしれない。ただ、私は眺望を追及する方ではないので、もっとよいところはあると思うが、いずれにしろ神戸の町から離れたここからの展望はあまり迫力を感じない。

うん、ここが一番の展望地だ

12:30
一軒茶屋の窓は曇り中は見えず、営業していないのかなと近寄り覗き込むと大勢の人たちの影が見える。ここに寄ってしまっては目標達成が危ぶまれるし、入ったら意思の弱い私は間違いなくお酒を頼むことになるだろうし、この一軒茶屋の客になる日はこないだろう。

一軒茶屋は素通り

いよいよ登りは辛い「七曲」だ。一気に300mほども下らなくてはならず、喘ぎながら登るハイカーたち、青ざめた娘さんを励ましながら登るファミリーを横目に、思わずスキップが出てしまいそうな南向きで明るい山道だ。

稜線近くでの砂防ダム工事も終わり、橋の覆いが外されすっきりとしている。この橋は踏み板・欄干とも踏み抜きそうな・折れそうな、一見して木橋に見えるが桁は鉄骨製で丈夫そうだ。

工事はようやく終わり
砂防ダムがまた一つ増えた

まだお昼過ぎたばかりなので登っていく人が多い。大部分が広い魚屋道の七曲だが、なぜか狭いところですれ違うことが多い。ただ今日は大団体の姿は見えず、多くても5人ほどのグループで問題はない。これが紅葉の時期真っ最中なら大集団に次から次へと出会う破目になるなることだろう。

息も切らせず七曲を下る
登ってくる人たち大変そう

モミジではないが赤くきれいに色づいた木が1本だけ道脇にある。樹木の名前、いや植物全般に疎い私には名前が分からないが、見事な紅葉だ。

きれいな紅葉だ

13:04
七曲の最後の急下りをヒョイヒョイと下りきると、住吉川の上流になる小川の飛石を渡る。

飛石を渡ると

小川の南は土樋割峠からの林道終点の広場だ。ここまで車でも入れると思うが、ハイカーの多い時期にアイスキャンデーや飲み物やお菓子を下界の倍ほどの値段で販売したら儲かるかな。

土樋割峠への広場に出る

13:14
本庄橋跡への急な石段を下っていくと、見事なモミジの紅葉が待っていた。目の覚めるような真っ赤な紅葉を楽しませてくれ、これを植えてくれた方に感謝状を送りたいくらいだ。ただ残念なのは1本だけではなく、もっと沢山植えてくれていたら魚屋道の名所になったのにと残念だ。

本庄橋跡の見事な紅葉

本庄橋跡から雨ケ峠へは飛石を渡ったり、モミジの残り黄葉を愛でたり、葉の落ちた雑木林の風情を感じたりしながら緩やかに登っていく。途中まだ歩いたこのない住吉道へ抜ける分岐道もあるが「大谷茶屋のおでんにはんぺんはあるのかな」、「だいこんは外せないな」などなど考えつつ脇目も振らずに魚屋道を直進する。

住吉川の上流

雨ケ峠への登り

風情を感じる葉を落とした木々

13:41
本庄橋跡から15分で雨ケ峠に到着。数人のハイカーが休憩しているが、これから最高峰へ登り有馬に下るのだろうか。ガイドブックのコースタイムはここから2時間となっていて日没は5時前、まだ明るいうちに有馬温泉に着ける限界点に近い。

東へ東お多福山へと登って芦有バスで帰る手もあるが、それでは前回と同じルートになるし「おでん」もなくなるし、真っ直ぐ進む。脇道、分岐の多い六甲を歩くには常に強い信念を持たないといけない。

雨ケ峠

雨ケ峠の南で不思議な二人連れとすれ違った。サンチカやみゆき通りで出会ったら何も感じないお洒落な服装でハイヒールこそ履いていなかったが、どこから迷い込んだのか二十代前に思える女性二人とすれ違ったのだ。六甲では普通のことなのかも知れないが、播州の山ではまずお目にかかれない二人に絶句し声をかけることもできずにすれ違った。一人ではなく二人だったので何事もなく無事に下山したことだろうが、一人だったらどういう対応をとったらよかったのだろうか。

誰もいない水のみ場

13:51
芦屋カンツリークラブの敷地に入る。もうこの辺からは行き違う人も少なく、男性の単独や二人連れとすれ違ったようだが、先ほどのうら若き女性二人に出会った後なのであまり記憶にない。

ゴルフ場の敷地に入る

13:58
ゴム仕掛けで自動的に閉まるゲートを開けゴルフクラブの敷地外に出る。ゴルフ場の中は鳥かごのように鉄網で囲んだ通路にしてしまった方が未練がないのに、変に魚屋道を残そうとするので中途半端な雰囲気で好きではない。

ゴルフ場の敷地から出る

もう登りはないと安心していると、そんなことはない。老化というのは便利なもので、何度も通っているのに最近のことは記憶からすぐに消えさり、もしかして早期痴呆症が始まっているのかと心配するほど、生まれて初めての道を歩く気分を常に味わえる。このつたない山行記録も、実は私の大脳以外の外部記憶装置としての役割が大きく、時どき読み返しては「うーん、そんなこともあったのか」と感傷にひたれてることができて、若い人には味わえない特権だ。

峠を越えたのにまた登りだ

どういう経緯か
二車線になってしまった魚屋道

14:24
風吹岩に着いた。山猫や猪に出会えるの楽しみにしていたのに、ハイカーしかいなく残念だ。六甲最高峰よりも市街地に近く大展望が広がり、大阪の町並みの向こうにも山々が見える。もしかして私の執務室も見えないかと200mmズームレンズ(35m換算で320mm)に変えたら、ビル自体は見えたが北向きの私のいる部屋は見ることができなかった。

風吹岩に着いた
大展望だ

200mm望遠で大阪の中心部を
私の執務室は見えるかな

ここ風吹き岩から魚屋道を離れ高座ノ滝へと下山していく。一度は登ったことがあるのに、こんなに急なところもあったのかと驚くほどの岩場もあり楽しみながら下りていく。

高座ノ滝へ下る
梯子もある

向かいには荒地山へ続く山々が

うん最高の景色だ
モデルがいいし

幼い子を連れた家族連れ、羨ましいカップルといっしょに中央稜を下りていくが、次に来るときはロックガーデン中央突破だと、枝道を確認しながら下っていく。

三点確保の岩場の下りも少しある

15:19
有馬温泉から歩き始めて5時間40分、ようやく目的地の高座ノ滝に辿り付いた。谷間の滝はもう薄暗くシヤッターが開いている0.5秒間じっとしているのが大変で、通り抜ける人を撮ろうと 幽霊みたいになってしまう。

ほんとは薄暗い「高座ノ滝」
シャッタースピード0.5秒

いよいよ本日のメインイベント「大谷茶屋のおでん」だ。大鍋の中で色々なおでんが美味しそうに待ち構えている。さて何にしようか。

「だいこん」「まるあげ」「たまご」「じゃがいも」の四品と小さなアルミ急須に入った熱燗で、700円。山渓のガイドブックに載っている、夢にまで出てきた大谷茶屋のおねいさん二人がよそってくれて、大感激。

岩屋のような客室ではグループが宴会の真っ最中で、私はオープンカフェ風のテーブルだ。はんぺんはなかったがおでんはよく味がしみ、熱燗も適温でとても美味しく、長かった山歩きの疲れを癒してくれた。

大谷茶屋のおでんと熱燗

このあとはJR芦屋駅まで30分ほどかけて歩いて帰ったが、すでにカメラはザックにしまいこみ記録はとっていない。



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