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小野アルプス西コース、紅山



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平成19年3月31日(土)  メンバー 私だけ

小野町駅〜福甸峠登山口〜岩山〜紅山〜岩倉峠登山口〜小野町駅

2万5千分の1地形図「社」、「三木」を参照すること。



JR加古川線小野町駅から

7:10
JR加古川駅から乗車した加古川線西脇市駅行きの4両編成の電車は、定刻に小野町駅に到着。

今年は正月から六甲山に入りびたりだったが、久しぶりに地元の山に登ろうと小野市と加古川市の境に聳えたつ小野アルプスを制覇せんと思い立った。その中の最高標高地点は紅山で184mしかないが、低山なれども十ニものピークを越えての小野アルプス全山縦走は六甲全山縦走と並ぶ厳しい試練の場だ。

JR加古川線小野町駅
すぐ西側の踏切を南へ渡る

加古川駅から5駅目の小野町駅はローカル線にありがちな無人駅。料金は加古川からなら230円。車中のアナウンスでは度々「ゼンブのドアが開きます」と言っているが、「全部」なのか「前部」なのか同じ発音でも意味は大違い。そのアナウンスのあった駅では運転席後のドアのみが開き、運転手さんが料金の収納をしているので「前部」を意味しているのだろうが、できることなら同音異義語のある言葉は使って欲しくない。

去年の暮れに竣工した真新しい「小野町駅」には、「ぷらっとすきみの」の名前が駅名よりも目立つところに掲げられている。それは手打ちそば処「ぷらっとすきみの」のことで、駅舎のほとんどを占めている。小野アルプス全山縦走のあとは市場駅から乗車する予定なので、食べることはかなわないだろうが、美味しいのだろうか。


福甸登山口は遠いぞ

小野町駅の西側の踏切を渡り、川沿いの車道を西へと進む。「夢咲通り」と名付けられた広い歩道のある道路の交通量は極わずかで、700m程歩き左手に見える「コミュニティーセンターすきみの」を過ぎると十字路に出る。十字路を左に曲がり、さらに道なりに1,300mほど進むと途中に「小野 鴨の里 健康小道」がある。

7:42
女池の堤に「←紅山登山コース 1.8km 小野アルプス縦走中・西コース」の道標がある。西コースの東側登山口と、中コースの西側登山口へと行く道で、全山縦走路途中の岩倉峠に出てしまうので左には曲がらずに真っ直ぐ進む。

左折すると岩倉峠
全山縦走登山口は直進

7:55
地形図で男池と表示されている鴨池に突き当り左折し、さらに進むと道端に福甸古墳群の案内石柱が立っている。道から110mとあるので寄っていく。車で来たら通り過ぎてしまうだろが、歩きだといつでもどこでも立ち止まることができ、車では見えないものが見えるのが歩きの醍醐味だ。

福甸古墳群(1号墳)

皿池の湖畔にたたずむ福甸古墳1号分はその墳丘のほとんどを失い、石室をわずかに隠すのみ。羨道部の天井石は落下しているが、小ぶりな玄室はよく残されている。千数百年前に築かれてたこんなお墓に、私も葬られたいものだが、

覗くのは誰だ

福甸古墳群

古来、キスミノと呼ばれた当地域で、六世紀中頃から七世紀にかけて力を持っていた有力者の墓として築かれた古墳群です。横穴式石室を持つ六基の古墳が知られており、石棺を持つものもあります。当古墳は、一号墳と呼ばれ、一番規模が大きく、古墳群の中でも中心となる主墳といえます。直径10m、高さ約3mの円墳で、入口の羨道部は天井石が落下していますが、奥の玄室は完存しており、その構造がよく分かります。

福甸町



小野アルプス縦走西コース、一番目のピークは宮山

8:24
小野町駅を出てから1時間14分、ようやく小野アルプス縦走路の西の登山口「福甸峠」に到着。林間を行く二車線舗装車道からいきなりの登山口で味わいはないが、登山口が無事に見つかったということで良しとしよう。

近畿自然歩道の公設道標「←鴨池1.1km 権現ダム1.1km→」に「←小野アルプス 縦走西コース 紅山方面 福甸峠 登山口(山岳風)」の案内板が間借り(いや柱借りかな)している。でも「山岳風」とはどのような意味なのだろうか。あと小野アルプスの概念図が描かれた案内図もあるが、あまりにも抽象化しすぎていてさっぱりルートが分からない。でも、たくさんのピークを越えていくのだけは理解できる。

福甸峠の西コース登山口

登山口から雑木林の中の九十九な道を登っていくが、ほんの少し登ると緩やかになってしまうのが悲しく、足が「もっともっと登りたい」と文句を言い出しそうだ。歩きやすいとは言えないが程ほどに整備された明確な道が続いている。

雑木林の中をジグサグに登る

平坦になった道は周囲を木々に囲まれ、いわゆる雰囲気のよい歩くのが楽しい道になる。けれども木々のため見通しは効かず「ここがピークかな、ひとまず記念撮影をしとくか」と写真を撮って進むと、本当のピークが先に見えていてがっかりしたりもするが、コバノミツバツツジが咲き始めた明るい道を歩くのは気分がよい。

緩々と登る

8:56
登山口から30分もかけてようやく一番目のピーク「宮山」に到着。途中で何度も花に捕まり大分時間がかかってしまったが、普通に歩けば10分もかからないと思う。宮山ピークも木々に取り囲まれて入るが、北側に鴨池、南側には権現池が木立を透かして見ることができる。

宮山ピークは薄い木立に囲まれている


二番目のピークは大展望の岩山

9:04
下ること5分ほどで「中峠」。「←福甸峠 紅山→」の案内があり、東西方向へも薄っすらとした踏み跡があるように見える。

中峠 左:宮山 右:岩山
東西にも下りられそう

岩山への登りは思いのほか急で、木につかまりながらの苦しい登りだが、これも長くは続かない。

岩山への登り

登りきると、一番目ピークと同じで木立に囲まれどこが頂上なのか分からない。おそらく四等三角点標石(点名:岩山)があるところが頂上だろうと思うが、あらぬところに「九十士・山歩会(加古川市)」の登頂記念プレートが下がっている。こういったものを下げる行為自体が恥ずべきことだが、恥の上塗りとはこういうことだという見本を見ることができて、とても嬉しかった。

9:26
九十士偽ピークを過ぎて南へ回り込むと、山名の由来となっている南向きの岩場に出た。播磨灘まで見通せる大展望が広がっているのだが、黄砂のせいでさっぱりだ。

岩山南面の展望岩場

9:28
三角点標石はどこかと探すと、展望の岩場からシダの茂る中をなぜか逆S字を描く道の脇に埋まっている。もっと眺めの良いところの方が三角点標石を埋めるのには向いているとは思うが、GPS測量の世の中、上空さえ見えていればよいのだろう。

163.8m三角点標石は道端にあるが
見通しは全くない


三番目のピークは紅山

登りに比べると下りは比較的緩やかだが、なぜかまっしぐらに下っていく。下の写真、下り道の真っ直ぐさを写し取ろうとしたのだが、私が邪魔をしていて道自体も見えず困ったものだ。だが「人が写っていないのは写真ではない」との自論を貫くためには致し方ない。

紅山目指して下る

9:43
私の歩いた範囲では南側の好展望地は多くあったが、北側がよく見えたのは岩山から下山中のここだけだった。

岩山から下山中、鴨池がよく見える

9:49
岩山と紅山の鞍部に着いた。「←西コース入口 ↑福甸町女池・鴨池 紅山山頂→」の道標があるが、ここはなんという名前の峠なのだろうか。

岩山、紅山間の峠
鴨池からの道が登ってきている

紅山への登りは手を使うほどではないが、岩場の急登でトラロープが張られている。でも長くは続かずお楽しみ区間はあっという間に終わってしまう。

紅山への岩場の登り

急登が終わると標高184mの紅山頂上へはUの字を描くように迂回していく。無理やりショートカットして間の谷間を真っ直ぐに進んでもよいが、道のない雑木藪の中を下りそして登る山行記録を書く栄誉は藪山愛好家に譲ろうと思う。

雑木林の中を紅山頂上目指し進む

10:09
雑木の中を行く道は、切り立った南向きの岩場に飛び出す。山陽自動車道が足元はるか下を横切っていて、疾走する大型トレーラーもおもちゃのように見える。

山陽自動車道が麓をぶった切っている

南側の展望が広がる岩場を行くと、すぐに紅山の南岩尾根が目に飛び込んでくる。見た目にはそれほど急そうには見えないが、平均斜度は間違いなく30度はあり、行ってみると部分的にはもっと急な部分もあるのに違いない。


これが紅山南面の岩場 その奥は小野富士だ

10:22
ハイカーが一人、平らに削ったような不思議な岩の上でお食事中の紅山頂上に到着。何はともあれ、無事にここまでやってこれた幸せに感謝してシェーを行う。

紅山でシェー その1

次は、本日の山行の最大の目的、紅山山頂に鎮座する冷蔵庫との対面だ。この緑色のツードア小型冷蔵庫には見覚えがある。私が今を遡る頃30年ほど前に初めて一人暮らしをしたときに使っていたのと凄く似ているのだ。

冷蔵庫の中にはなにが

私の冷蔵庫は赤色だったが(写真の私のザックもシャツも赤でいまだに色に対する趣味は変わっていないな)どう見ても同じタイプで、冷蔵部のドアを外してみると「ナショナル電気冷蔵庫 NR-80TA-G形」との表示があった。内容量は75リットルで重さは29キログラム。製造番号からすると1983年(昭和58年)製造と思われる。

冷凍庫の中には「2007 小野アルプス縦走 思い出日記帳 紅山 184.2」との表書きのあるノートが入っているだけで、がらんとしている。扉の蝶番部分は腐っていて、本体から簡単に外れるてしまうが、冷凍庫・冷蔵庫とも後付のカンヌキが付けられ、冷蔵庫扉はそれでも外れてしまうのか針金を巻かれている。

その冷蔵庫の扉はなぜか左右が逆(上下が逆というのが正しい表現かもしれない)になっていたので、在りし日の正しい位置に直しておいた。

松下電気産業NR-80TA-G型
おそらく昭和58年製


紅山南岩尾根を下ったり登ったり

10:45
さて次は紅山の南岩尾根だが、できることならここを登ってきたかった。平坦な紅山頂上からいきなり急角度の岩尾根が始まり、高度感が凄い。ただ尾根の延長上を山陽自動車道が通っているのが興ざめだが。まっ、とりあえず下ってみる。

へぇー、結構な高度感

下り始めは変化の多い岩肌で、急なところもありルート取りが難しい。どこぞの岩場のようにペンキの線が引かれているわけではなく、所々に白ペンキの丸マークが付けられているだけでルートは自分で判断しなければならない。

岩場下り その1

でもセルフポートレートを撮りながら下れる余裕があるので、無茶苦茶険しいわけではない。真下、真上から撮ると傾斜の具合が分かりがたいので、幅広の岩場の特性を活かし横方向からの撮影をしてみる。

岩場下り その2

結構雰囲気が出ているなと自分でも感心しているが、紅山の名前の謂れになっている赤い岩の正体は、オレンジ色の地衣類だ。栄養分の全くないだろうこんな岩尾根でどうやったら生きていけるか不思議だが、灰色や薄緑色などの別種の地衣類との、おそらく数千年、いや何万年にも渡る生存競争を繰り広げている。

岩場下り その3

紅の正体はオレンジ色の地衣類

岩尾根の中ほどから状況は変わり、変化に富んだゴツゴツとした岩肌からのっぺりとしたものに変わる。地学の知識はないがここの岩は火成岩と思われるので、何度かの噴火によって最初は柔らかい溶岩、その上に固い流動性の低い溶岩が流れたのだろうか。ということは紅山は火山だったのだろうか。

中間地点 岩相が変わる

単独ハイカーが岩尾根の下までやってきたが、立ち止まり岩尾根を眺めるばかりで登ろうとしない。見た目の険しさに惑わされているのだろうか。岩肌は十ニ分なグリップがあり、急なところには自然が刻んだステップもあり、三点確保までは必要ないが四足駆動に切り替えればらくらくと登っていくことができる。結局ハイカーは登らずに引き返していった。

平均斜度はあまり変わらないが
下部の方が緩やかだ

11:30
岩尾根を下りきるのに45分かかったが、それは撮影のために登ったり下りたり、下りたり登ったりを何度となく繰り返したためで、極普通に下れば5分もかからないような気がする。

先週ひいた風邪がまだ治りきらず、体力は回復しているのだが気力が今ひとつで、このまま縦走を続けても楽しめないし、集中力を欠いた山歩きほど怖いものはない。昼時も近づいてきたのでコンビニ弁当を広げる。

12:05
せっかくここまで来たのだから、紅山頂上まで岩尾根を登ってから帰ることにする。

昼食後、紅山を登り返す

12:15
10分で紅山頂上に再び到着。私は真っ直ぐに登ったが、白ペンキの案内は岩尾根の途中から西側のトラロープの張られた草付へと誘導しようとしている。

では、紅山再登頂記念に展望の岩テラスでシェー。後に見えているのは加古川の権現池だ。頂上に付きものの登頂記念プレートを捜すが1枚もない。吊り下げていただろう針金が木の枝に残っているのを見ると、誰かが取り外して処分しているようだ。

紅山でシェー その2


下山して小野町駅へ

12:17
紅山から2回目の下山は北へと下る普通の山道とする。東へと向きを変え、まっしぐらに下る急な道でトラロープが張られている。向かいの小野富士頂上の北側に展望櫓が見え、次に来る機会があったら必ず登ろうと心に決めた。

トラロープが張られたきつい道を下る

きつかった下山路は北へと向きを変え、緩く麓まで下っていく。表通りには出ずに案内に従って「岩倉古墳」へ寄り道をしていく。

12:44
岩倉古墳群の二号墳は中には何もないが羨道・玄室ともにきれいに残っている。中に入りしばらく経つと目が慣れてきて、屈まなければ通れない羨道の狭さに比べて玄室の広さに気がつく。今話題の高松塚古墳のような壁画はないかと探したが、あまり大きくない自然石を積んだ玄室にはそれらしきものはない。

岩倉古墳群(二号墳)

羨道、玄室ともに保存状態良好

(岩倉古墳群)岩倉二号墳

紅山山麓には、古墳時代後期(6世紀代)に築かれた横穴式石室の古墳群が点在しています。特にこの二号墳は、市内の横穴式石室を有する古墳の中でも、築造技術、規模、保存状態ともに優れています。石室は、遺体や副葬品を納める玄室と、玄室と外部を結ぶ羨道からなります。その規模は、全長9.5m、玄室長約5m、幅約2.5m、高さ約2.8mで、羨道は幅約1.4m、高さ約1.2mで、入口は南東に設けられています。

平成8年10月 小野市

12:58
岩倉峠北の登山口に出た。道の向かい側からは小野富士頂上北側の展望デッキへと登る道も始まり、南へ岩倉峠へと進めば紅山南尾根への登り口もあるようだ。

岩倉峠北の登山口

13:20
地形図の破線道を北に辿り、集落内への道には入らず女池北側の車道に出る。

13:50
朝歩いた道を戻り、小野町駅に到着。次の加古川駅行きは20分後で、駅舎内の地元産のそば粉を使った本格的な手打ち蕎麦屋さん「ぷらっときすみの」で、ゆっくりとビールを飲みながら蕎麦を楽しむには時間が足らない。かといって次の次は80分先で、これは時間を持て余しそうだ。蕎麦を食べるのは諦めて次の電車に乗ることにする。

加古川線では注意しなければならないことがある。第4土曜日(4月28日を除く)の昼間は11時から14時までの4本の電車が運休になる。でも、全山縦走をする人には関係がない時間帯の運休だ。


山行中に出会ったお花

ヒサカキ(雌花)

コバノミツバツツジ

サルトリイバラ(雄花)

シハイスミレ?



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