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有馬温泉癒しの森、鼓ケ滝から太鼓滝へ



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平成19年10月13日(土)  メンバー 私だけ

鼓滝公園〜炭屋道〜魚屋道〜筆屋道〜瑞宝寺公園

2万5千分の1地形図「宝塚」を参照すること。


毎度毎度の有馬温泉詣で、でも一度も浸かったことがない

二週間前に六甲最高峰から魚屋道で有馬温泉へと下ったとき、新たに開設された筆屋道と炭屋道を発見した。調べてみたら今年の6月3日に「有馬温泉癒しの森」として開設記念式典が行われ、すでに4ヶ月以上経っているではないか。新し道好きの私としては迂闊なことだったが、遅まきながら歩いてみた。

この「癒しの森」は有馬温泉を基点とした周回路をなし、時計回り・反時計周りの二種類のコースがある。2週間前に魚屋道から炭屋道を下ったので、今回は登りに使いたいので反時計周りに無条件に決定。

普通に私の住む姫路市から有馬温泉へ行くと片道で一番安い交通機関を使っても1,620円もかかり、往復では3,240円と気楽に行ける所ではない。しかしJRの三ノ宮以遠の定期券と神姫バスの定期券を持っている私は、有馬温泉まで往復で200円とほとんどただみたいな料金で行けてしまう。近所の山に自家用車で行くガソリン代よりも安く、有馬温泉を基点・終点にする山行を繰り返すようになった一要因だ。

JR三ノ宮駅とミント神戸をつなぐ連絡橋の下に、神姫バスと阪急バスが共同運航する三宮・有馬温泉路線のバス停がある。ちなみにバス乗り場は4番だ。この路線は神戸市の敬老パスを利用して有馬温泉方面に行ける唯一の公共交通機関とあって、交通弱者の老人が多いバス路線の中で、とび抜けて老人率が高い。今日は座席が半分埋まるほどだが、紅葉の最盛期ともなると早くバス停に着いて待っていないと、満員で立ったまま有馬温泉に行く羽目になる。

9:47
9時丁度に三宮を出発した神姫バスの本日第一便は定刻よりも少し遅れて有馬温泉に到着。運賃は680円のところを、神姫バスの通勤定期券を持っているだけで85%引きの100円になる環境(エコ定期券)制度を毎度活用し下車。

週休二日だと6ケ月定期券を買わないと、回数券の方が割り安になってしまうバス定期券を持つ人が少ないのか、はたまたこの制度を知らないのか今までに神姫バスの環境定期券(エコ)定期券制度を活用しているのを見たのはたったの一回だけだ。私は通勤区間が最短区間のせいもあるが、山行に利用するバス代だけで元を取っている。

三宮から神姫バスで有馬温泉に


今日の山行は鼓ケ滝から

10:01
太閤通りのバス停から観光客の群れから抜けて、温泉街の中をぼちぼちと歩いて、ます池へと滝川を渡る有明橋まで着いた。この滝川は有馬小学校が1991年から始めた、ホタルの飼育・放流活動「有馬にホタルを呼び戻そう」により毎年ホタルの数が増えてきているそうで、この付近と太閤橋下流部の有馬川がホタルの鑑賞スポットだ。

有馬・滝川ゲンジボタル発生地

  1. この川(滝川)では、毎年6月中旬〜下旬にたくさんのホタルが発生し、地元、観光客のみなさんの楽しみとなっています。
  2. 地元では神戸市と協力し、ホタルの幼虫や餌となるカワニナ(巻き貝)を放流し、ホタルの光が消えないように努力しています。
  3. ホタルは、卵を産むとすぐに死んでしまいます。ホタルはつかまえずに見て楽しみましょう。
  4. ホタルは、ゴミがなく、きれいな水の川に発生します、ホタルを守るためには、空き缶やタバコのポイ捨てはやめましょう。

有馬温泉観光協会 神戸市環境局 神戸市北区役所

ここのます池は観光地によくある、釣り賃は高いのにあっという間に決められた匹数が釣れてしまい、釣った魚は池に戻されるというぼったくりのものとは違うようで、子ます3尾を釣って料理代込みで1,150円(入園料150円+子ます釣り1,000円)とリーズナブルなお値打ちのもののようだ。ただし、私は魚を食べるのは大好きだが、釣るのは嫌いなので行く機会はないだろうが。

10:11
本日の山行開始地と決めた鼓ケ滝公園に到着。

公園の一番奥に「鼓ケ滝」があり、滝見の一等地に普通の休憩所のような外観の「滝見茶屋」がある。メニューはおでん・あまざけ・ぜんざいがメインのようだが値段が表示されていないのが怪しい。

お客は誰もいないが、おでんの鍋がぐつぐつと良い香りを撒き散らしていて滝見の邪魔をしている。だが、ここでおでんを注文したら、それだけでは済ます「熱燗もちょうだい」になり、今日の山行は開始することもなく終了点を迎えてしまうのは目に見えているので、最近は、ことに加齢に伴って意思が強くなった私は(加齢性頑固病にかかっているのか少し心配だが)、滝の写真を撮るだけ我慢した。

鼓ケ滝

鼓ケ滝

この滝は、上下2段になって、落ちる滝の音が山々にこだまして、打つ音に似ていたので、この名がつけられました。現在では何度か洪水により、岩が崩れて形が変わったため、残念ながらその音を聞くことはできません。

10:18
何度も通っているロープウェイ有馬温泉駅だが、鼓ケ滝から登って来たのは初めてだ。いつもは裏側しか見なかった鼓ケ滝公園の案内図を始めて正面から見た。少し嬉しかった。

ロープウェイ有馬温泉駅の横に出る

鼓ケ滝公園

滝つぼに落ちる水の音が周囲の岩に反響し、鼓を打つ音に似ていたことからこの名がつきました。園内には川魚やサワガニがおり、森林浴が楽しめます。また、初夏の夕暮れ時には、ホタルがあたり一面に飛び交い、涼やかなカジカの鳴き声が聞こえます。
園内には有明桜の碑があり、秋の紅葉など四季折々の魅力にあふれ、有馬六景のひとつに数えられる有馬の名勝です。

※現在は岩が崩れて形が変わってしまったため、鼓に似た音を聞くここはできません。

神戸市生活文化観光局観光交流課

有馬の奥座敷 滝見茶屋

温泉街から少し離れた森の中に静かな公園がありその奥に「鼓ケ滝」があります。
この滝は、上下2段になって落ちる滝の音が山々にこだまして、鼓を打つ音に似ていたことからこの名がつけられました。
現在では幾度の洪水により岩が崩れて滝の形が変わったため、残念ながらその音は聞けませんが、心地よい滝の音を聞きながら「滝見茶屋」名物、おでん・あま酒・ぜんざい等々楽しみ下さい。

紅葉谷へと続く林道は、砂防ダムの工事も終わりダンプカーが行き来することもなくなり安心して歩ける。今年は烈夏だったので、冬は厳冬になる予感がしてあの氷爆を見ることが出来るのではないかと楽しみにしている。

紅葉谷へと続く林道を行く


今日の登りは炭屋道だけ

10:36
炭屋道登り口に到着。南側の広い河原では子供たちがなにやら野外活動を行っている。思うに大人が子供たちだけのことを思って真剣に計画立案されたプランでは、子供たちもその時は面白いだろうが、結局は思い出にも何も残らないことだろう。大人自身が子供のことを完璧に忘れさって楽しめるようでなければ、子供たちも満足しないと思う。

炭屋道登り口の案内板

案内図を見て、今日の行程を想像するが明確なイメージが全く湧かない。たぶん最近の何とかの森と同じで、安全第一の遊歩道が瑞宝寺公園まで続いていて、歩き終わったら何の感慨も残らない山歩きになる予感がする。

神戸市北区有馬町


有馬温泉癒しの森

日本三古泉に数えられる有馬温泉。温泉街から少し歩くだけで豊かな自然と触れ合えます。
周辺の山々は、多様な植物や生き物が見られるなど自然の宝庫といえます。アリマウマノススズクサ・アリマグミなどアリマの名がつく植物やコバノミツバツツジ・ヤマアジサイなどきれいな花を咲かせる植物もあちこちに見られます。
この豊かな自然を、より親しんでいただくため、この辺り一帯を「有馬温泉癒しの森」と名づけ、森の散策や、様々な野鳥や草花と出会うことで、心が安らぎ、癒しの効果を得ることができるように遊歩道や休憩所などの整備を行いました。
名湯の温泉浴とともにこの森での森林浴、日光浴、イオン浴などをお楽しみ下さい。また、ウォーキング効果による癒しと健康をあなたのものとして下さい。


有馬温泉癒しの森周辺のみどころ
有馬四十八滝

有馬温泉癒しの森周辺では、七曲の滝や百間滝をはじめ、「有馬四十八滝」と呼ばれる数々の滝が見られます。

特に冬に見られる「氷瀑」は見事で、ツララ状の氷が岩盤を覆い、非常に美しい風景です。近年は、凍ることが少なくなりましたが、年に数度は見ることができます。
時間のある方は、足を運ばれてはいかがでしょうか?



筆屋道

江戸時代、有馬町には筆屋が軒を連ね、筆屋町という地名までありました。この町では、優れた竹と筆の穂先になる、鹿、狸・狐などの獣毛の入手が容易であったことや、湯治客人などの需要が多かったことなどがその要因であり、有馬土産の代表的なものでした。その歴史を偲んでいただこうと、この歩道を筆屋道と名付けました。


魚屋道

神戸(魚崎)の海浜で獲れた魚を魚屋(トトヤ)さんが有馬へと運ぶために利用していたことが、名前の由来です。
江戸時代から明治のころまでは交易の道として、また、現在はハイキングコースとしてよく利用されています。


炭屋道

この辺りには、昭和戦前ごろまでは、多くの炭焼き窯がありました。
この道はそばに今も炭焼き窯の跡が残っています。炭焼きは良好な森を守るという点からの効果が見直されています。このようなことから、この道を炭屋道と名付けました。

この注意喚起警告文↓は少しだけ気になるが、公設の遊歩道によくある完璧に安全は確保されているのに、責任逃れの役所言葉の一例だと軽く見ていた。

利用者の皆様へのお願い

瑞宝寺公園への歩道(筆屋道)は、砂防堰堤付近を通過します。そのため、水位の上昇により、歩道の一部が分断されたり、土砂の流出が発生する恐れがあるため、通行される場合は、十分に注意して下さい時間に十分な余裕がない場合や、降雨時・降雨後の使用は遠慮ください。また、危険ですので、砂防堰堤には近づかないようにして下さい。

有馬町自治協議会

10:39
東屋の横から始まる階段道として炭屋道は始まる。何もここから魚屋道へ登る道を造らなくても思うが、有馬温泉を始点とした行程数時間の周回コースはいまだかってなかったので、有馬温泉から始まり有馬温泉で終わるハイキングコースは目新しさもあり人気コースになるかなと思う。

東屋横から階段道で始まる炭屋道

10:41
登り始めてすぐの道端に、幻のアジサイといわれてきた「シチダンカ」がなんと3,000株も植えられているという。梅雨時期は山歩きを休んでしまう私は六甲のアジサイを見たことがなく、いつも見るのは枯れ果てたのばかりだ。来年6月になって覚えていたここに戻ってこよう。

今の時期にシチダンカは咲いていません

シチダンカ

シチダンカは、ヤマアジサイの花が八重化したものです。江戸時代文政年間に来日したシーボルトの著書「フロラ・ヤポニカ」で紹介されたものの、その後見つからず、幻の花と言われていました。しかし、昭和34年(1959年)に神戸市立六甲山小学校の職員により六甲山で再び発見されました。
ここにはシチダンカとヤマアジサイがありますので、どこが異なっているのか見比べてください。

10:42
次は炭焼窯跡だ。こんなに次から次へと見どころが現われたら、炭屋道を今日中に登りきれるか心配になってくる。そして今までの里山登りから『どんなに歩き易い踏み跡も、炭焼窯跡が現われると終わりで、そこから上は藪ばかり』という経験則が身についているので、登っている時に窯跡を見つけるとぞっとする。反対に藪を下っているとき炭焼窯跡やぽつんと立つお墓を見つけると嬉しくなる。

今回の炭屋道に関しては一度下りたことがあるので、道が続くのは知っていはいるが、それでもあまりよい気分ではない。

道端の炭焼窯跡

炭焼と里山

ここにある石積みは、かつての炭焼き窯の跡です。炭の材料にする木材は重いものが多いので、木材を焼いて軽くしてから運び出していました。
炭を焼くために木を伐る林は薪炭林と言われます。材料を得るために利用され、人々の暮らしを支えてきたのです。薪炭林は伐採を繰り返されることから木が根元から株立ちになって生えるのが特徴です。
もし、山の中を歩いていて、株立ちの木がたくさん生えている場所に出合ったなら、その林は、かつては薪炭林として利用されていたことがわかります。

道は広い尾根を登っていく。今の時代の遊歩道は軒並み小型重機を入れてガシガシと山肌を削り抉り取って造るものとばかり思っていたが、この炭屋道は手造りだと思う。全体的に土工量が非常に少ないし、九十九折れに小型重機の折り返しのための食い込みがないことなどから手造りと判断したが、物凄い人件費がかかった道であるのは間違いないだろう。

九十九な道を登る

今年の春に開通したとはとても信じられない道で、風景に溶け込み古くからある山道風の雰囲気が心地よい。でも、元々は木々が生い茂った藪尾根に、細心の注意を払って微妙に蛇行する道を通し、周囲の常緑広葉樹を伐り下草を刈って造られた全くの人工の景色だとはとても思えない。正に職人技がなすもので、素人が造ると整備しすぎてパラダイス遊歩道にしてしまうのとは大違いだ。

尾根を登る

緩やかなところはほとんど手を加えず自然な感じに、急なところは丸太階段道にしている。ハイカーの中には階段道を嫌う人がいるが、階段は土留めの役割もしていて、皆が階段道だけを登り下りすれば山を荒らすことは最小限になる。

しかし悲しいことに、いい年をしたハイカーに限って「ショートカットだ」とばかりに近道をしたり、「こっちの方が歩き易いんだ」と階段の脇を歩いたりして、山肌を荒らしていく。今日も一人だけ炭屋道を下りてくるハイカーに出会ったが、彼もその一員のようでわざわざ歩きにくいだろうに、階段道を外して下ってきた。いつもなら私はにこやかに「こんちわー」と挨拶するのだが、そいつは無視してやった。

階段道が見えてきた

11:00
魚屋道が近づくと道は異様を呈する。少し急になるかもしれないが真っ直ぐな階段道でも十分だと思うが、丸太を大量に使った緩やかなスロープ状の九十九な道となっている。余ってしまった資材をここで無理やり使ったのか、ここまでの道があまりによいので誉めすぎて損した気分だ。

このジグザグ階段が終われば魚屋道

11:02
魚屋道に着いた。登り口にも15分と表示があったが、私は倍近くの26分もかかってしまい、あまりの遅速ぶりに我ながらあきれ返るしかない。丸太ベンチがあったので疲れた振りをしてへたり込む。

さすがにメインルートの魚屋道、ハイカーがボツボツと行き来をしているが、なぜか今日は男性も女性も単独ばかりなのが不思議だ。

魚屋道に出た、フッー

アカマツ林(アカマツ−モチツツジ群集)

有馬の的場山周辺にはアカマツの林が広がています。このアカマツ林は有馬にとどまらす、六甲山系を代表する植生と言って良いでしょう。
こうしたアカマツ林は、かつての薪炭確保などのため、人の手が入ることによって維持されてきた「里山」です。近年はあまり人の手が入らなくなり、ツル植物の繁茂や、照葉樹の増加などで、その姿を変えつつあります。

■観察できる樹木
夏緑樹  モチツツジ コバノミツバツツジ タムシバ※
針葉樹  アカマツ
※タムシバは有馬ではコブシと呼ばれています



魚屋道を少しだけ歩く

この辺の魚屋道は的場山を等高線に沿って巻いているので、完璧な水平道だ。魚屋道自体は変化はないが、今回の整備の巻き添えで周辺の林を手入したのかすっきりとした風景が続いている。

平坦な魚屋道を南へ

11:09
地形図には的場山の東側を巻く破線道があり、魚屋道との分岐点には「南無妙法蓮華経」と刻まれた石碑が立っている。ここから東側を巻く道を一度は歩きたいのだが、その入口が私の目には見えず、ウェブにも記録が見当たらない。

的場山南の南無妙法蓮華経石碑の
近くに休憩所が出来ている

11:11
石碑のすぐ先、魚屋道がほんの少しだけど登り始めるところに新しく造られた休憩所がある。下の写真は上のとほぼ同じところで逆方向に撮ったもので、石碑のすぐ近くだ。

峠の休憩所

この道が有馬温泉への主回廊だった時代が過去にあり、馬や駕篭や徒歩で湯治客が行き交ったことがあり、この場所に茶屋があったという。その場所に茶屋を再現したかのような休憩所では女性ハイカーが一人食事中で、遠慮しながら写真を10枚ほど撮る。でもなんで今日会う人たちはみな単独なのだろう。

峠の休憩所の中

魚屋(トトヤ)道と峠の茶屋

この道は、江戸時代、有馬温泉に神戸(魚崎)の魚を運ぶために使われました。明治になり、県道有馬住吉線として整備され、さらに明治7年大阪・神戸間に鉄道が開通すると、住吉駅が有馬温泉の最寄駅となり、徒歩・馬・駕篭による交通が盛んになりました。
新しい茶屋もできました。もうすぐ有馬、というところでの一服。期待と胸膨らむ至福のほと時だったことでしょう。
いまもトトヤ道として多くのハイカーに利用されています。

有馬温泉由来の植物達

植物の中には、有馬(アリマ)の名前がついたものがいくつかあります。有馬温泉の周辺で初めて発見され、植物学者として有名な牧野富太郎博士によって命名されたものもあります。もし、近くで見つけたときは、採ってしまわずに、じっくり観察するだけにしてください。

アリマウマノスズクサ(ウマノスズクサ科ウマノスズクサ属)
アリマグミ(グミ科グミ属)
アリマコスズ(ササ科)

11:17
休憩所から緩やかに登り始めた魚屋道を行くこと4分ほど。普通の切り通しにしか見えないところが、六甲最古のトンネルがあったところだ。ただし、解説板の絵を見るとトンネルというよりは、はげ山からの落石を防ぐロックシェードとして描かれていてトンネルとは呼べないものじゃないかと内心思っている。

ここがトンネル跡かな

六甲最古のトンネル跡

ここは、現在は崩れてしまっていますが、六甲山で最も古いトンネルがあったと言われているところです。明治7年、大阪・神戸間に鉄道が開通し、六甲越えのこの道も交通量が増え、道も広がり、トンネルもできたのです。荷物を積んだ馬や湯治客を運ぶ駕籠が石垣のトンネルをくぐっていました。


初めて歩く筆屋道

11:19
トンネル跡の目と鼻の先に「筆屋道」の下り口がある。「炭屋道」は二度目だが、この「筆屋道」を歩くのは初めてでワクワクだ。地形図を見ると谷幅いっぱいの砂防ダムが待ち構えた谷へ下りていくように見える。

トンネル跡からすぐの筆屋道下り口

「筆屋道を経て瑞宝寺公園 1.3km 約30分」の道標と、例の注意喚起警表示がここにもある。新設された遊歩道にどんな危険地帯が待ち構えているのか楽しみになってきた。でも今日は降雨時でも降雨後でもないのが残念だ。

利用者の皆様へのお願い

この歩道は、砂防堰堤付近を通過します。そのため、水位の上昇により、歩道の一部が分断されたり、土砂の流出が発生する恐れがあるため、通行される場合は、十分に注意して下さい時間に十分な余裕がない場合や、降雨時・降雨後の使用は遠慮ください。また、危険ですので、砂防堰堤には近づかないようにして下さい。

有馬町自治協議会

炭屋道に負けず劣らずのよく整備された道として筆屋道は始まる。谷が尾根へ突き上げる急なところはグネグネと緩やかに、こんな調子で瑞宝寺公園まで続いていたら危険などあるわけないと感じる。

筆屋道は谷道

道両側の植林は手入れされて明るい谷になっているが、この遊歩道の整備にあわせて間伐されたのかヒョロヒョロの木ばかりで商品価値はなさそうだ。はたして、日本の林業に将来はあるのだろうかと荒れ果てた植林地を歩くたびに思う。間伐・枝打ちなど手入れをして丹精込めて育てても、伐採後に再造林できる木材価格でなければどうにもならないが、輸入木材には到底太刀打ちできる状態ではない。

手入れされた植林地は明るい

11:24
オオバヤシャブシ林に入ったように解説板は言っているが、私はオオバヤシャブシを他の木々と見分けることが出来ないので、普通の雑木林にしか見えないがヒョロヒョロと延びた幹がそうらしい。

この解説板近くにも注意喚起警表示があり、近くに砂防ダムもあるし、もうすぐ危険地帯に突入するような気がする。

オオバヤシャブシ林を行く

オオバヤシャブシ林

六甲山系の谷筋や崩れやすい斜面には、オオバヤシャブシの林が分布しています。
実は、このオオバヤシャブシの林は自然にできたものではなく、緑化のために人手によって植栽されてできたものなのです。オオバヤシャブシは根に根粒状の組織を持っており、空中窒素の固定能力があるので、主に治山。砂防工事の際の肥料木に用いられてきましたが、春先に花粉をたくさん飛ばすため、特に人家近くでは問題になることもあり、近年ではその利用は少なくなりました。

■観察できる樹木
夏緑樹  オオバヤシャブシ ヤマザクラ ウツギ

11:28
筆屋道を下り始めて9分(写真を撮ることもなく普通に歩いたら5分もかからない)、筆屋道最大の危険地帯に突入。下流側に大きな砂防ダム(瑞宝寺第三堰堤 高さ15.0m 長さ62.5m 昭和49年10月7日完成)が見え、遊歩道は流の全くない渓流を渡っている。

ここが最大の危険地帯にはとても見えないが、大雨が降ったら一気に水量が増えて渡渉は不可能になるのだろうか。なお、ここが最大の危険地帯であることは、この先にある注意喚起警表示が全てこっち側を示しているので明らかだ。

ここが増水時には通行不能になるらしい

11:35
砂防ダムを越えた道は広い谷へと下っていく。この辺が筆屋道の中で最も雰囲気が良いところだ。除伐された木々がそこかしこにまとめて積まれているのが気になるが、数年も経たらすっきりとした風景になることだろう。

手入れされた明るい谷道

11:39
そろそろ瑞宝寺西尾根への登り口かなと思うころ「筆屋道を経て魚屋道0.6km約20分・瑞宝寺公園0.7km約10分」の道標が現われ、その先に見覚えのある瑞宝寺西尾根への登り口がある。

あと10分で今日の山行は終わると道標にあるがそんなことはない。最短ルートを通っても私の足なら30分はかかるし、道標の示すルートを辿れば小一時間ほどかかる区間が本日のメインイベント、有馬温泉癒しの森の核心部、花道だ。

11:40
瑞宝寺西尾根への登り口はロープで閉鎖され、来年の春までは工事のため通行止めの表示板が下がっている。ここから瑞宝寺西尾根へ登る人はいなくなったのか、筆屋道周辺整備の下草刈のためか、あるいは公的な整備を放棄した瑞宝寺西尾根を歩いてほしくない意思が働いたのか、どこが道か、はたまた踏み跡なのか皆目分からない。

瑞宝寺西尾根は来年の春まで通行禁止

通 行 止

ハイカーの皆様へ
H19年7月26日〜H20年3月25日
上記の期間中、谷止工事の索道
架線設置中につき通行止めと致します。

壽建設

11:43
炭屋道の登り口にあったのとほぼ同じ「有馬温泉癒しの森」の総合案内板があり、ここから渓流近くを四度の渡渉で瑞宝寺公園奥のにある太鼓滝へと行く以前からある安全ルートと、筆屋道として切り開かれたアドベンチャールートに分かれ、「展望デッキを経て瑞宝寺公園」が指し示す後者ルートを選んだ。

炭屋道登り口にあった案内板とほぼ同じもの

11:48
総合案内板から5分ほどの登りで展望デッキに到着。展望台なら少しでも登るだろうが、この展望デッキは一段下りて眺望を楽しむ少し変な施設で、ベンチはなく休憩所の役割は兼ねていない。場所的には瑞宝寺谷西尾根の突端に当たり、谷とその北側の風景が広がっている。

今日はピークらしきところは通過しないので、ここで恒例のシェーを執り行うことにする。そして神聖な儀式が終わった時に若い男性単独ハイカーが下りてきた。

展望デッキでシェー

展望デッキまではよく整備された遊歩道だったが、ここからは遊歩道が牙をむく。ここにも「瑞宝寺公園0.6km約10分」の道標があるが、絶対に嘘だ。

なぜか筆屋道はワイルドな様相に変化

炭屋道の階段道に比べたら雲泥の差の、真っ直ぐで急な、おまけに土質が悪く滑り易い、こんなところに遊歩道を通すことは絶対に間違っているところに無理やりトラロープが張られた階段道が下りている。

遊歩道に最初からトラロープを張ってしまうという愚挙を犯してしまったら、この先どうやって道の保守管理をしていけばよいのだろう。予算が潤沢にあればコンクリ階段道や鉄階段道にすればよいのだろうが、他の都市から見れば自前の空港まで造ってしまい裕福そうに見える神戸市とて無限の予算があるわけでは無し、これから先のこの遊歩道の行く末が心配になる。

トラロープの張られた急な下り階段

12:00
谷底が近づきガレたところに、無理やりに階段道の遊歩道が造られている。この春に開通したとは思えないほど荒れているが、最初からそうなのかも知れない。こんなところに遊歩道を通すのが間違っていて、砂防ダムの解説板が呑気に立てられているが、それよりは「足元注意・丸太階段はいつ崩れるか分かりません」、「トラロープは飾りです・絶対に掴まないで下さい」という警告板がほしいところだ。

真新しい遊歩道なのに荒れ果てた道だ

癒しの森のダム(堰堤)

「有馬温泉癒しの森」には大小さまざまな治山・砂防ダムがあります。
治山ダムや砂防ダムは、大きく2つの役割を持っています。
一つは、渓流の土砂の流失や侵食を防ぎ、市街地と山を土砂災害から守ります。
もう一つは、治山・砂防ダムの裏に貯まった土砂の隙間に、雨水を貯え、ゆっくりと下流に流します。これにより、渓流から水が涸れるのを防ぎ、乾燥した時期にも水を供給することができます。

12:05
(この辺ではセルフポートレイトを何度も撮ったので、タイムスタンプはあまり意味がない)
古い砂防ダムの下流で渡渉するが、増水時の注意などの警告板はない。

渡渉中

渡渉先には治山工事の解説板があり、その奥に古い石積みが残っている。

治山工事の解説板を読む

六甲の森林

現在は、美しい森林ですが、約100年前までは六甲山のほとんどははげ山でした。
その荒廃した山に、木を植え、治山工事や砂防工事を行うことにより、神戸の街は災害から守られてきたのです。
ここには、昭和初期に治山工事を行った石積みが残っています。六甲山の緑を守る作業は今でも引き続き行われています。

12:09
十字路だ。昔からの道は写真の右から来て保安林標識のあるこっち側へと左に曲がって下るのだが、筆屋道は正面から来て左手の丸太階段道を登って行く。その方向には「瑞宝寺公園」の道標があるが、瑞宝寺公園へは絶対に直進した方が近いし、そのうえ安全だ。でも私は道標に忠実に従い(私の後に続くハイカーも100%この危険な遊歩道に引き込まれてしまうと思う)丸太の登り階段へと右に曲がる。

他の分岐点でもそうなのだが、今回整備された筆屋道と関係のない方向へはどんなに明確な、筆屋道より数倍はよさそうな道でもその方向には公設の道標はない。

十字路を右に曲がる

急な下り丸太階段の先には、道幅50cmもない斜面を削り取った細いいやらしい道が待っていた。一歩踏み外せば、いやそのうち今は狭いが平らな道に土砂が積もり、漫然と歩いたら足を滑らせて谷へと滑落すること間違いない。いくらなんでもこれでは万人が歩ける遊歩道とは言えない。

遊歩道でこれはないだろう

何のためか広々と木々を伐ったところがある。おそらく遊歩道建設の資材をヘリコプターで搬入した跡地と思うが、どうなのだろうか。

12:17
危険(「よし明日は六甲山でハイキングだ。話題の有馬温泉癒しの森を歩こう。」と言う家族にとっては、特に普段運動不足のお父さんには)な遊歩道を脱し、昔からの道に合流した。ここには「瑞宝寺公園0.3km約5分」の道標があり、何枚も見かけた増水時注意の注意喚起警告板もある。

ここから瑞宝寺公園までは、新たに手が加えられてた形跡はなく、おまけに公設道標も全くない。おそらく地権者の了解が得られなかったためと思うが、今回のルートを逆周りするとその入口を見つけは非常に困難だ。

昔からの道に合流
ここから瑞宝寺公園までは
新たな整備はされていない

12:20
今まではこのルートを歩くハイカーは少なく、分かり難いルートをテープのマーキングを頼りに渡渉するポイントもある。瑞宝寺西尾根を歩こうという明確な意思を持ったハイカーには問題はないが、ぶらぶらと森の散策をしようと思ってきたカップルにはちょっと厳しいルートだ。

渡渉ポイント
公設案内板は整備されてなく
テープでのマーキングだけ

ササや草が道を半分覆い隠そうとしているところもあり、この奥から筆屋道という遊歩道が始まっていることが想像しにくい道もあり、ここまで来ても引き返すのが有馬温泉癒しの森が想定しているだろう一般ハイカーの反応ではないだろうか。

この先に遊歩道があるとは思えないな


太鼓滝と紅葉の名所瑞宝寺公園

12:27
ようやく太鼓滝に到着。道は滝の左岸から始まるが、広い河原から筆屋道へ続く道を探し出すのは困難だ。分かりがたい道の入口にはテープのマーキングはあるが、案内は皆無でここが筆屋道・有馬温泉癒しの森への入口だと判断できる材料は全くない。

なお、ここはまだ瑞宝寺公園ではなく、そのうえ不思議なことに瑞宝寺公園からこの太鼓滝への道標はない。

太鼓滝
滝のすぐ右から細い道が始まるが
案内は全くない

瑞宝寺公園から運良く太鼓滝への道を見つけることができても、最初に出るのはこの広い河原で、一番奥に太鼓滝を見つけるのは容易だが筆屋道への入口を見出すのはほとんどのハイカーには無理。

太鼓滝への広い河原から出る

12:33
瑞宝寺公園の舗装遊歩道に出た。ここにはラミネートされた有馬温泉癒しの森の案内があるが、その内容は「入るな」と言っているように見えてならない。

瑞宝寺公園に出たが
ここから筆屋道まで行ける人は
皆無だろう

癒しの森方面

展望デッキを経て魚屋道まで約40分→
←神鉄有馬温泉駅まで約20分

「癒しの森」は自然の森林です。勾配、
階段も多く、川を渡る箇所もあります。
十分お気を付けてください。

北区役所・有馬町自治協議会

こんな風なワイルドな筆屋道だったが、私にはとってはとても素敵な遊歩道で、有馬温泉から魚屋道で最高峰に登るとしたらこの道を第一候補に上げたい。

あと一ヶ月ほど後に先訪れたら、アマチュアカメラマン群れを成して右往左往しているだろう紅葉の名所の瑞宝寺公園だが、今日は誰もいない。主を失って何百年も経た石の碁盤が柵の中で、いつになったら次の対局が始まるのかと淋しそうに待ている。でも昔の碁は四人で対局したのか、座石が四ケ所もあるのが怪しい。碁筒を置く場所なら座石の横になると思うのだが。もしかするとこの石の碁盤を作った人は碁というものは四人でするものだと信じているのかもしれない。

瑞宝寺公園の石の碁盤

石の碁盤

晩秋、紅葉を賞でている間に思わず終日を過ごしてしまったという「日暮の庭」に、今なお残るこの石の碁盤は、その昔豊太閤がこれを囲んで心ゆくまで一日の清遊を楽しんだといわれている。

本日のお昼ご飯はサークK・サンクスの季節限定商品で、あさっての10月15日が最終販売日となってしまう「とろさんま炙り焼寿司」だ。昔からサンマが大好きで、今の時期は毎日毎日妻その1に焼いてもらい、食べたあとの頭と背骨だけが残っているのを見て「ネコでもこんなに上手に食べないわよ」とからかわれるくらい大好きだ。

本日の昼食
「寿司の美登利監修 とろさんま炙り焼寿司」

瑞宝寺公園

かつて太閤秀吉が。「いくら見ていても飽きない」と誉め称えたことから、「日暮らしの庭」とも呼ばれます。
秋には、燃えるような鮮やかな彩りが広がる関西屈指の紅葉の名所となります。園内には、太閤秀吉が愛用したといわれる石の碁盤や、京都の伏見城から移築した旧瑞宝寺の山門(瑞宝寺は明治6年(1873年)に廃寺)のほか、小倉百人一首に選ばれている恋の歌「ありまやまゐなのささ原風ふけば いでそよ人をわすれやはする(大弐三位)」の歌碑があります。

神戸市生活文化観光局観光交流課

瑞宝寺公園からバス停がある太閤通りまでは、もっと遠いと思っていたが下り坂を15分も歩くと着いてしまう。今日も温泉に全身つかることなく、金泉横の足湯で我慢し、家族へのお土産に炭酸煎餅を買い神姫バスに乗り込む。

私の第一校正者の妻その1の感想、「あなた、最近年をとったせいか皮肉ぽくなったんじゃないの」、言いたいことが言える幸せをしみじみと感じる今日この頃だ。



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