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六甲山最高峰から
ヴァージンスノーの白水尾根を下る



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平成20年2月11日(月)  メンバー 私だけ

神戸市内でも雪が積もった翌々日のことです。

東おたふく山登山口バス停〜土樋割峠〜七曲り〜六甲山最高峰〜
後鉢巻山北側〜白水尾根〜白水峡〜有馬温泉バス停

2万5千分の1地形図「宝塚」が参照になるかもしれないが、残念ながら登山道は記載されていない。


足跡のない雪を求めて

土曜日に神戸市内でも雪が積もり、その翌々日の連休最後の祝日に六甲山へとヴァージンスノーを求めて登ってきた。そんなの雪山に行けばヴァージンスノーなど歩き放題なのは分かっているが、私の趣味の「楽しい低山里山歩き」の範疇を外れてしまう。

六甲山で二日間も誰も歩かないルートなどあるのかと思うだろうが、それがあったのだ。ガイドブックに記載されていない、そしてウェブでの山行記録も非常に少ない白水尾根ならと、目星をつけて行ってみたら大当たりだった。でも、なぜ降雪の翌日ではなく翌々日にしたかというと、翌日だと樹上の雪が溶け出した冷たい雫が嫌だからだ。


東おたふく山登山口バス停から出発

8:21
毎度毎度、芦有道路の宝殿橋からではなんなので、今日は同じく芦有道路の東おたふく山登山口から歩き始める。

JR芦屋駅から乗車した阪急バス有馬温泉経由山口営業所行きのバスは、路肩に少々の雪を残すのみの芦有道路を快調に登り、定刻からわずかに遅れただけで標高460mほどの東おたふく山登山口バス停(阪神芦屋・JR芦屋・阪急芦屋川いずれからでも320円で、なぜかICカードの機械にはカバーが掛けられていて使えない)に、私とあと3人のハイカーを降ろし北へと走り去っていった。

数名の乗客を乗せて
有馬温泉へと走り去る阪急バス

8:25
毛糸の帽子を被り、手袋をはめていざ登山開始。でもなんだか寒くない。一緒に下りた3人の内1人は東お多福山へ、2人は土樋割峠から蛇谷北山へと分かれていき、私は魚屋道七曲りの登り口へと舗装路を行く。

東おたふく山登山口バス停から出発

8:43
土樋割峠近くの砂防ダム改修工事現場までは、路面の雪は除雪されていた。連休なのに工事現場では忙しそうに働く人たちがいる。

蛇谷第二堰堤改修工事現場

8:51
工事現場を過ぎて少し登ると、舗装道路は雪で覆われてしまった。でもすでに足跡だらけで、これは私が求めている雪道ではない。

もうすぐ土樋割峠だ、そして雪は足跡だらけだ

8:57
土樋割峠から見た東お多福山への入口は、多くの人が歩いたのか雪は全くない。蛇谷北山への道も同じで、予定通り七曲りを目指すことにする。ここで1枚服を脱ぎ、まだ必要はないがスパッツを着けアイゼンを付け9:14に再出発。


七曲りを最高峰へ登る

9:23
七曲りの登り口の飛石を渡る付近は雪が少ない。でも、ここでこれぐらいだから山頂には沢山の、そして六甲山北側にはさらに沢山の雪が残っていいそうでワクワクしてきた。

七曲り登り口、飛石の手前

9:36
七曲り登り始めの急階段・急登をこなすと、あとは一軒茶屋を目指して緩やかに登っていく。路面の雪は踏み尽くされて、土色になっている。アイゼンさえ付けていればなんでもないが、何らかの滑り止めを用いた方がお気楽に歩けることだろう。

七曲り登り始め

9:52
さらに登っていくと周囲の斜面も雪に覆われていてよい感じになってきた。頭上の木々に積もっていただろう雪も全て溶けていて、天気はよいのに冷たい雨が降ることもない。

七曲り中盤

10:17
もうすぐ六甲越、一軒茶屋が近い。風はなく、天気もよく、気温も結構高く寒さは全く感じない。毛糸の帽子など暑くて被っていられない。当然ながら霧氷のむの字もない。

これだけの残雪、一昨日の降雪当時の様子はどうだったのだろうか。おそらく写真も撮れないほどの吹雪だったのだろう。

七曲り終盤

10:21
ユーモラスな雪だるまに迎えられ一軒茶に到着。連休といえども雪の六甲山に登ろうななどという、酔狂な人はあまり多くなく七曲りで出会った、追い越されたハイカーは10人ほどだった。

一軒茶屋手前には雪だるまが

10:33
最高峰へと登っていくと自衛隊のマイクロウェーブ中継所の前にかまくらが出来ている。なかなか見事なもので、これだけのものを造るには大分時間がかかったに違いない。大人なら詰めて2人、子供ならゆったりと3人は入れそうな広さがある。

最高峰にはかまくらが

11:11
真っ白な雪と真っ青な青空の対比が素晴らしい六甲山最高峰で、恒例のシェーを執り行う。今日もギャラリーが一人もいなく少し寂しい。けれども一人でこんなことをやっていることに対して、決して虚しさは感じない。

お昼には少し早いので、コンビニのサンドイッチを立ちながらむしゃむしゃと食べる。結局、このサンドイッチが本日のお昼ごはんとなり、ザックの中の野歩記風おでん雑炊を作ることはなかった。

六甲山最高峰でシェー

昔々バイクに乗っていた頃、あるバイク雑誌でブーツカバーとレインウエアはどちらを表に出すかという問題に対して、ブーツカバーは内側にレインウエアは外側にするのが正解だと教えてもらい、長時間の雨中走行を実体験し正しいことを確かめたことがある。

で、登山用のスパッツとレインウエアはどちらが表にするのが正しいのだろうか。過去のバイクの体験からレインウエアを外にして挑戦してみた。


後鉢巻山の北から始まる白水尾根

11:13
六甲越えから最高峰への坂道では、幼い女の子が若い両親に見守られながら楽しそうにそり遊びをいている。登るときに見たときは、今にも泣き出しそうなしかめっ面をして、ただそりの上に座り込み両親にしかられていた。でも、今はもうすっかりコツをつかみ嬉々として滑っていて、その光景がほほえましい。

11:25
白水尾根は六甲越東側の鉢巻山トンネル北側の旧道から始まる。旧道の入口にはポールが立ち並び車は入れないがハイカーは自由に入ることができる。

鉢巻山トンネルを抜けて北側の旧道へと入る

11:30
旧道には結構な雪が残っているが、残念ながら昨日に付けられた感じの足跡も残っている。くそ、先を越されたか。

足跡を避けて新雪を進む
鉢巻山トンネル北側の旧道

11:34
白水尾根は西宮市と神戸市の市境となっているので、この神戸市と西宮市の市境標識の裏から始まる。

ラッキーなことに、ここまであった足跡は様子見だけで白水尾根に入ることなく引き返していて、夢にまで見たヴァージンスノーを満喫できることが確定的となった。ガードレール脇の吹き溜まりは膝ほど深さだ。

白水尾根はここから始まる

尾根を覗き込むと、雪を被っているが明確な踏み跡を識別することができた。市境になるくらいだから明確な尾根が続きマーキングや私製案内板なども充実していると聞くし、雪の深さはここが一番で下りるに従って減ってくるだろうと判断し、白水尾根を下りることを決断した。

尾根の途中でにっちもさっちも行かなくなり引き返すことになっても時間は十分に余裕があるし、天気は快晴で気温は高い。危険性は低いと判断した。


笹薮の白水尾根は雪で真っ白かな

11:43
噂にたがわす白水尾根はミヤコザサが茂る藪尾根で始まった。踏み跡は雪に隠されているが痩せ尾根で歩けるところは限られているし、マーキングはちらほらと付けられているし、雪も深いところでふくらはぎ程度。白水尾根の下山を継続することにした。

でもスパッツをレインウエアの下にしたのは、もうこの時点で失敗したことが分かった。天から降る雨や雪ならば効果があったろうが、積もっているフカフカの雪がレインウエアの裾から進入してくるのだ。でも、まあいいかとそのまま下る。

白水尾根は結構な藪尾根だ

11:55
足元のミヤコザサは、せいぜい膝くらいしかなく、冷たい雨を降らすの頭上の木々の残雪もほとんどなく快適な、何時になく楽しい山行になってきた。

写真では踏み跡が実在するのか分かりがたいが、実際に歩いてみればかすかだが明白な浅い窪みが雪の上に続いているのが見える。この先唯一心配なのは、身の丈を越す雪まみれの笹薮やシダ藪が現れることだが、ウェブで調べた限りではそんなことには陥らずに済みそうだ。

同じような感じの尾根が続く

11:58
尾根がぐんぐんと狭まってきて、一歩踏み外せば滑り落ちそうだ。すぐに潅木に引っかかるだろうが、慎重に尾根の真ん中を一歩一歩進んでいく。

両側が切れ落ちたやせ尾根だ

12:04
尾根は真っ直ぐに続いているが、私製案内板やマーキングテープの文字が、左を指して「←白水山」と誘導している。雪上に浮かぶ踏み跡もこの先では幾分薄く感じる。当然ここは左へ曲がるが、直進すれば船坂谷へと下っていくと思う。

ここで左へ入る

12:11
比較的緩やかだった尾根は、左に入ってから結構急になってきた。北向きの尾根は日があまり当たらなかったのか、膝近くまである。これぐらいあったら、踏み跡が分からないものとばかり思っていたが、市境のためか木々の切り開きは広く、進路に不安を持つことは全くなかった。

北斜面は雪が深い

12:24
尾根がまた狭まってきた。踏み跡は雪に隠されて全く表面に現れていないが、狭い尾根から外れようがないので違う尾根に入ったのじゃないかと心配する必要もない。でも、ときどき現れるマーキングを見て安心するのは事実だ。

葉が茂ったら周囲が全く見えないだろうな

12:32
まだ麓は彼方なのに、不思議なことに車の走行音が聞こえる。地図を見ると芦有道路の明かり区間が近くにあることが分かり、空耳いや幻聴かと不安になったが一安心。

時々写真にあるようなマーキングが現れる

12:41
登り坂は日当たりがよく残雪は少ない。ここを登れば白水山かと勘違いしたが、なぜか白水山よりも20mほど高いピーク(偽白水山と命名)が手前にあり、そこへの登りだった。

笹薮を登っているわけではなく
明確な踏み跡を辿っている

12:51
地形図を見ると偽白水山から白水山のある尾根へ乗るのは難しそうに見えるが、そんなことはなかった。記憶ははっきりしないがマーキングがはっきりしていたのだろう。偽から本当の白水山への尾根は狭く、ここも迷いようがない。

白水山近くは狭い尾根だ


白水山から白水峡へ

13:04
白水山頂上に到達。平べったい、どこと言って特徴のない、展望もない頂上だ。六甲山としては珍しく登頂記念プレートが数枚下がっている。皆さん自己顕示欲の塊のようなお方に違いないので、ここで公開してみる。

 
白水山頂上、四等三角点(点名:白水谷)がある

13:16
見通しの効かない平べったい白水山頂上の三角点標石から、地形図とコンパスで市境が下山方向だと見極めて進むと、マーキングが真正面に待っていた。その先は少々藪っぽく、もし地形図もコンパスも持たずに雪の白水山に来て、偶然マーキングを見つけても進むべき方向か判断を下すのは難しい。

白水山からの下山路は藪々している

13:23
藪を抜けるとまた明確な尾根が始まる。でも、もしかすると白水山頂上から明白な踏み跡があるのを見過ごして藪に突入しただけかも知れない。

あとは白水峡へ下るだけで途中には見所もないが、まだまだ楽しい雪の尾根歩きが楽しめる。

まだ雪はくるぶしほどまである

13:31
標高が低くなってきたのか、いつの間にかミヤコザサの勢いがなくなり、雪さえなければ歩き易そうになってきた。私の歩いた跡には地面が見えるぐらいに雪が少なくなってきた。

周りは少しは見えるが、山ばかり

13:39
道が左右に分かれている。いや違う、尾根が左右に分かれている。明確な標識類はなかったが白水峡は左で、右に行くと船坂谷へ行くことは地形図を見れば明らかだ。

この地点が白水尾根のほぼ中間地点で、ここまでに2時間かかっている。あと2時間を費やしても車道には遅くとも16時までには出られることが見込め、白水峡へと下山を継続する。

ここは左を選択する
右は船坂谷へ行くと思われる

13:45
終始同じような景色の中を歩いているので、飽きてきた。で、集中力を欠くと地面にふんわりと積もっているだけの雪に足をとられて尻餅を突くことになる。この辺では積雪は10cm以下しかない。

急な下りが続く

13:50
5分経っても同じような風景だ。急な下りがなおも続き、一歩一歩慎重に下っていく。

さらに急な下りは続き、一気に100mほど下る

14:02
急な下り尾根を忠実に辿ってきた踏み跡は、ここでは小ピークを右に巻くようだ。標高600mほどのところではないだろうか。

尾根を右に外れて水平道を行く

14:09
狭い尾根に岩塔が行く手を塞いでいる。左右に巻き道はなく、マーキングは岩塔を登れと囁いている。雪が薄く着いた岩場と軽アイゼンの相性の悪さを思うと登るのが嫌だが、アイゼンを外すのも面倒くさく、そのまま慎重にアイゼンと岩とをギリギリとさせながら攀じ登る。

岩塔の向こう側には急な下り岩場が待ち構えているかと思ったが、幸いにも普通の尾根に続いていた。この時点で手袋はすでにビショビショになっていたが、気温が高いせいか冷たく感じない。もちろん替えの手袋とそのまた替えの手袋はザックの中で出番を待っていたが、最後まで使うことはなかった。

狭い尾根を岩塔が塞いでいる

14:15
日当たりのよい登り斜面では、とうとう地面が露出し始めた。アイゼンを外そうか迷ったが、この先には風化が進んだ白水峡が待ち構えているだけで、堅い岩場は出現しないだろうしこのまま行く。

楽しい雪の白水尾根はもうお終いだ

14:24
写真ではあまり恐怖感は感じないが、左右が切れ落ちた脆いエッジの上を綱渡りをするように進む。左は落ちてもすぐに止まるが、右ははるか下まで土の斜面が続いていて「落ちるなら左、落ちるなら左」と唱えながらエッジを渡る。

もっと尖って見えたが
たいしたことないな

14:30
「新・北摂山の会」の案内板が下がっている。直進は「船坂谷」で歩き易そうな雪のない道、左へ入るまだ雪の残る小道は「白水峡」で、下ってきた尾根は「白水山」となっている。もちろん計画通りに白水峡へと続くだろう小道へと左に入る。

細い道へと入り白水峡を目指す

14:34
踏み跡が雪に隠されていて、どこを行けば分からない。でもマーキングを見つけて、次を求めて周囲を見渡すと大体が視界の中にあり、適当に藪の中を進んでいく。

もうすぐ白水峡かな


白水峡は凄いぞ

14:40
いきなり右手の林が消えて白水峡がその姿を現した。凄い地形だ。ウェブで紹介されている写真と実物とでは雲泥の差があり、驚くとともに見惚れてしまった。まさしくバッドランドだ。

白水峡だ

14:40
足元を覗き込むと写真のような崖で、とても下りられそうにない。白水峡墓園が見えて有馬街道も近そうだが、大回りに行かねばならないのでまだまだ山歩きが続く。

ルートは崖の縁を行くのかな

14:55
マーキングは白水峡から西へ離れていくような、不明確な道もつられて離れていくような。そんなことは無視してどこでも歩けそうな疎林の中を枝を掻き分け進んでいくと、踏み跡様のものがありマーキングもある。

道を外しているような感じもする

15:03
白水峡の中へ半島のように突き出した林の中を歩いて来たみたいだ。行く手には花崗岩の風化が著しく進み、構成要素の長石と雲母が消え去り石英のみが残ったスポンジみたいな岩というか、触ると崩れてしまうほど風化が進んではいるが、体重を十分に支えられるほどの強度を持つ緩斜面が現れた。

白水峡の中へ下りてい

その下の普通の土の斜面は不可解な地形をしている。帰ってから調べてみると、白水峡はかつては二輪車や四輪車のトライアルの練習場と化していて、そのときに刻まれた溝のようだ。現在の白水峡は閉鎖されていて車はもちろん二輪車も入れない。

15:17
後鉢巻山北側からから白水尾根を下ること約3時間40分で、ようやく白水峡の平場に降り立った。本来の下山口はもう少し西側の白水峡墓園入口付近になるが、まあよしとしよう。

本日の山行終了

白水峡と有馬街道の間には、段差のある石垣と、石垣がないところはネットフェンスに阻まれて出る事も入る事もできないが、石垣を攀じ登りなんとか脱出。

帰りは有馬街道を通る宝塚行きのバスでもよいが、姫路へは遠回りだ。そこで有馬温泉バス停まで40分ほどかけて歩き、三宮駅行きのバスに乗り帰途に着いた。



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