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書写山へ春を探しに行くも花はなし



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平成20年3月8日(土)  メンバー 私だけ

書写吹バス停〜置塩坂参道〜六角坂参道〜刀出坂参道〜東坂参道〜書写バス停

2万5千分の1地形図「姫路北部」を参照しても、参考にならないかも。


石仏の置塩坂参道を登る

姫路市の書写山円教寺(書寫山圓教寺の表記の方が寺名としては正しい)は、平成15年公開トム・クルーズ主演のハリウッド映画「ラストサムライ」のロケ地となり、西国三十三箇所巡りの中の一寺院からたちまちにしてお隣の国宝姫路城を蹴落とす勢いで、世界的観光地へと雄飛することは残念ながら出来なかった。

姫路市中心部から離れていることと交通機関がロープウェイしかないことあたりが原因だろうが、以前と変わることなく静かな山上であり続けている。3月に入り、書写の山にも春が訪れているかなと散策してきたが、残念ながらまだ少し早かったようで、スギ花粉症の悪化というお土産をもらっただけだった。くしゅん、ずるずる。

8:04
姫路駅前から書写山ロープウェイ麓駅へ行く「書写駅」行きが出ているが、東側から登る置塩坂参道へは「雪彦山」・「山之内」・「前之庄」あるいは「サンピア姫路ゆめさき」行きで書写吹バス停で降りると、すぐ横が登山口で便利だ。

乗客は5人ほどで、その中で終点の雪彦山まで行きそうな人は一人だけと、閑散としたバスから書写吹バス停に降り立つ。料金は姫路駅前からなら360円。

書写吹バス停から走り去る雪彦山行きの神姫バス

8:10
バス停南側の竹尾ぶつだん店の横に登山口があり「書写吹 書写山登山口」の案内も立っている。車道は狭く歩道もなく、なのに交通量は多い。そして近くには車を止められそうなスペースはない。

置塩坂参道登り口

登り始めこそ急だが、足場の悪い岩場にはステップが切られている。書写山円教寺から120km彼方の日本海側の28番札所成相寺を目指して霊場巡りを続ける遍路の安全を願い刻み込まれた、私なんかが歩いたらばちが当たりそうな巡礼道だ。

8:21
急な登りはわずかで、緩やかな歩きやすい山道になる。書写山六参道のなかで利用者が一番多い東坂参道は岩場の尾根道で一番厳しいが、他の5参道はこのような緩やかな道がほとんどだ。

緩やかな置塩坂参道を登る

8:32
雑木林に囲まれた道は、日差しが差し込み明るく心地よい。でも葉が茂る季節のそれも天気の悪い午後などに下ると、楽しかった山行を締めくくるフィナーレにしては薄暗く寂しいものとなる。

明るい道も、もうすぐ葉が茂り薄暗くなる

8:44
背丈ほどの岩に石仏が彫られている。「大日さま」と呼ばれる磨岩仏で、岩の大きさの割には小さいが、前には石組みの祭壇が築かれている。石仏が見つめる東から南にかけてが開けていて、この置塩坂参道の唯一の展望地となっている。

大日さま

8:56
大日さまで一休みした後、一登りすると平たい岩に線刻された五輪塔が道端に立っている。ここまでに、近所の人なのか身軽な方二人に出会ったが、一人はいつも同じ時間に会う人で毎日の日課にしているのだろう。

線刻五輪塔

9:05
この置塩坂参道は道端に五輪塔があったり石仏が祀られていたりと、現在の仏教の抹香臭さをどうしても好きになれない私だが、時代を超越したこれらのものに癒されながらの登っていくのが楽しい。

小さな五輪塔

9:11
円教寺境内が近づいてきた道端に、三体の石仏が祀られている。そして、この先で参道の最高標高地点を過ぎて、下り坂となり境内に入る。

今日は何か花が咲いてないかと、登っては立ち止まり、立ち止まっては登りと牛歩の歩みで登ってきたので、いつもよりも大幅に時間がかかっている。

もうすぐ円教寺だ

9:24
置塩坂参道は円教寺のバックヤードに出る。ドコモの基地局があり、小さな消防車、ショベルカーなどが置かれ境内や参道の整備・清掃の拠点となっている。

摩尼殿から東に行くと置塩坂参道だ

9:29
摩尼殿前には誰もいいない。普通に登ってきたら8時45分ごろ、ロープウェイの始発(8時30分)でやってくる参詣者が来ないうちに着くのだが、この時間になっても誰もいないなんて不思議だ。

誰もいない静まり返った摩尼殿前


谷道の六角坂参道を下る

9:33
書写山の参道の全て、六参道巡りをするときは、ロープウェイの山上駅から下る東坂参道へと向かうのが常だが、今日は西坂参道と鯰尾坂参道を割愛した4参道巡りと決めてきたので、二番目は摩尼殿の南近くから始まる六角坂参道だ。

ここが六角坂参道の下り口

9:44
六角坂参道は湧き水の流れる濡れた、それも急な下りで始まる。トラロープも張られているが、一番肝心な部分はなかったりもする。でも急なのは谷底に下りるまでで、それからは谷沿いの道を緩やかに下っていく。

谷沿いを下る六角坂参道

10:07
「まだ何も咲いていないな。ちょっと早すぎたな。」と、半分諦めはじめているが、道からちょっと外れてみたりみたりしても、一輪の花もない。他の参道に比べて、この六角坂参道は花の種類が多いように感じるのだが、ほんとに何も咲いてない。

流れもチョロチョロ

10:11
谷が開け、初夏になるとハンカイソウの黄色い花が咲くところだが、去年の枯れたのがかすかに残っているだけで、まだ芽も出ていない。

ここにハンカイソウが咲くのは
まだまだ先だ

10:14
広い谷が狭まり、右岸側へ渡ると岩の上に五輪塔が祀られている。五輪塔以外にも、ところどころに何か意味ありげに形の整った自然石が置かれていたり、積み重ねていたりと、普通の登山道にはない変わった雰囲気がする。

岩の上に五輪塔が

10:23
谷が幾分深くなり水量も増えてきて、滝とまでは言えないが落差のある流れもあり面白い。

道を外れて渓流まで下りてみる

10:33
麓が近づくと、林道のような感じの広い道になる。この六角坂参道で出会ったのは男性ハイカー一人だけだった。

道が広くなると麓は近い

10:39
フェンスの向こう側には畑があり、農作業をしている人がいる。鹿やイノシシの食害を防ぐためにフェンスで取り囲んでいるのだろう。

この奥が六角坂坂参道だ

10:43
菅生川に架かる六角北橋から東へ入った、六角集落の北東端に出た。ここから入りすぐ先の分岐を左へ行くと神社があり、トイレ付きの広い駐車スペースがある。トイレは使う人は稀なのか、外観は綺麗とまではいえないが十分に使用可能な状態だ。

六角坂参道入口


ノイシュヴァンシュタイン城へ寄り道

11:05
近年にわかに人気が急上昇中の「太陽公園」が今度は、近くに小山の上にドイツ、バイエルン州にある『ノイシュヴァンシュタイン城』をモデルにした『白鳥城』を建築しているのだ。

思えば、10年ほど前に太陽公園に何の事前情報もなく一人で訪れたときは驚いた。広い園内には私のほかに入場者はなく(雨の降っている平日だったせいもあるが)、次々と現れる石造や建築物に圧倒されてしまった。それが、今は立派な観光地と化していて、エントランスの石像の前では若い女性たちが記念撮影をしている光景まで見ることが出来る。

太陽公園入口

11:16
べつに書写山の散策に飽きてしまって道草を食っているわけではなく、来年の完成までに一度は見てみたかったためで、白鳥城の工事現場向かいの東洋大姫路高等学校野球部グランド脇に登山口のある峰相山に登ろうなどと思ってここに来たわけではない。なおグランドでは何かやっていたような気がするが、野球に全く関心がなく記憶に残っていない。

白鳥城完成予想図

11:18
足場に囲まれて、どっちが前だか後だか分かりづらいが、九十九に登る進入路があるこちら側が後のように見える。山の上にあるので小さく見えるが、完成すると高さ45.0m、幅26.8m、奥行88.8mと姫路城天守閣をも凌駕する巨大なお城が出現し、姫路のロマンチック街道の終点となり一大観光地になるのが約束されている。

建築中の白鳥城

11:34
峰相山へ登るのをかかろうじて思いとどまり、次の刀出坂参道を目指して菅生川沿いの県道に復帰し、ファミリーマートで肉まんを買う。書写山六参道巡りの中では、コンビニはここと今日は通らないが鯰尾坂参道の下山地の新在家にある。

コンビニで肉まんを買い歩きながらモグモグ


近畿自然歩道でもある刀出坂参道を登る

本日三番目は刀出坂参道。地形図に刀出栄立町から破線道が円教寺へ通じ、近畿自然歩道と記載されている。でも刀出栄立町は栄えなかったようで、山際に雛壇状に造成された住宅地には、家は一軒も建てられていない。それから地形図では、破線道は住宅のない住宅地の北東角から始まっているが、実際には南東角に付け替えられている。

11:55
県道から外れ、樫谷橋を渡り刀出集落に入ると信号機のある三叉路の角に「固寧倉(こねそう)」が復元されている。そこから右に入る。

固寧倉のある角を右に入る

刀出の固寧倉(こねそう)

固寧倉は、姫路藩主酒井忠道が文化6年(1809)に設けた備荒貯穀用の倉庫で、固寧倉の名称は書経の「民は惟れ邦の本、本固ければ邦寧し」中から固寧の二字が選ばれた。扁額の揮毫は林(木へんに聖で「てい」)宇のもの。
刀出の固寧倉は、天保11年(1840)正月に建築を願出、2月16日に許可され、11月に完成し、天保12年に扁額が与えられた。切妻造り平入りの土蔵で長5.4m、横3.6m、軒97.5cmとなっている。

姫路市文化財保護協会

12:03
近畿自然歩道の案内に従って、住宅のない住宅地の南東端へ着いた。道標には円教寺まで1.6kmとあるが、もっと遠いような気がしてならない。

刀出坂参道の登り口

北へ水平道を進むと、地形図の破線道との合流点は十字路になっている。なぜ近畿自然歩道がわざと遠回りに付けられたのか理由は知らないが、地形図通りの破線道も存在している。

12:10
近畿自然歩道なるたいそうな名前が付けられてはいるが、実態は荒れた山道に過ぎず過大な期待は持たないほうが賢明だ。

登り始めはあまりよい印象ではない

12:19
左手かなり下に水音を聞きながら登る道は、意外なほどに幅が広い。谷側には石垣を築き、山側の岩場を削って通された、この参道を造るに要した莫大な労働力に見合うだけの参詣者が、かつてこの道を行き来していたとは信じがたい。昔は寺社仏閣への参詣が娯楽の主流だったのだろうか。

右下には石垣が築かれている

12:23
右岸へと渡る岩場には四角形の窪みがあり、橋を支える柱が立っていたのかもしれない。石段や石畳も残っている。

石段と石畳の参詣道

12:25
石畳がしばらく続き、大きな岩に守られるように石仏が二体祀られている。この石仏は下る時には絶対に気がつかず、通り過ぎてしまうことが多い。

大岩下に石仏が

12:31
チョロチョロのか細い流れで渓流美には程遠いが、二段の小滝だ。大雨が降った後に来たら、さぞかし見事な滝を見ることが出来るかもしれないが、今日は残念ながら見栄えがしない。

小滝もあるが………

12:36
雑木林から植林に変わった。スギとヒノキは落ち葉を見れば簡単に区別がつき、ここのはヒノキだ。ヒノキの花粉はまだ飛んでいないので、花粉症の私でも安心して歩くことができる。

ヒノキ植林地を行く

12:42
安心して歩いていたら、落ち葉がいつの間にかスギの特徴を示しているではないか。幹をみても間違いなくスギで、いきなり花粉症の症状が重くなってきた。クシュン、クシュン。ズルズル。

うわっ、スギじゃないか

上の写真にほんのかすかに写っているが、この刀出坂参道でハイカーに出会ったのは、ここで会った一組のご夫婦のみだった。

12:46
「右志しゃみち」と刻まれた石の道標が立っている。かなり古いものと思うが、江戸時代ぐらいなのだろうか。山上には千年も前に建てられた木造建築物もあるので、この道標ももっと古い鎌倉時代のものだったりして。

石の道標

12:54
書写山円教寺の境内が近づくと、谷に流れはなくなり、雑然とした感じの雑木林になってきた。結局この参道でも花には巡り合えず、書写山にはまだ春は来ていない。

もうすぐ円教寺奥の院だ

13:01
登ってきた刀出坂参道と奥の院の間には、鯰尾坂参道の下り口がある。

その奥の院開山堂からは鳴り物と読経の声が聞こえ、円教寺には一般車両は入れないのだがここには数台の車が止まっていてる。修行者たちが乗ってきたものだろうが、歩いて登ってこその書写山で、ここまで車を乗り付けるような安易さを選択するような人たちは、何事も成すことはできないと思う。かといって、何の考えもなしにただ闇雲に歩き回るだけの私はそれ以下だろうが。

奥の院に到着


岩尾根、展望の東坂参道を下る

本日四番目、そして最後は近畿自然歩道に指定されている東坂参道を下る。書写山ロープウェイ山上駅から南へと岩尾根を下り、六参道のなかで唯一展望を楽しめる、書写山に歩いて登り下りする人のほぼ100%近くが利用するポピュラーな参道だ。

書写山円教寺の諸堂

14:06
円教寺の境内を通り抜け、ロープウェイ山上駅に着いた。

山上駅横から東坂参道を下り始める

14:12
少し下ると、いつもなら播磨灘まで見通せる岩場に出た。残念なことに霞んでいて見通しは悪く、遠望は利かない。なお姫路城は八畳岩山の影になり書写山からは見ることが出来ない。

電柱が邪魔な東坂参道

14:21
東坂参道には真っ直ぐな急な道と、九十九な緩い道が交差しながら存在する。普通ならショートカットルートを行くのは山腹の崩壊につながり薦められないが、ここは最初に自然の地形をそのまま利用した直登ルートがあり、その後に岩を削り自然を破壊して緩やかな参道を通しているように見えるので、ショートカットルートを利用しても問題ない。

左、緩い道 右、急な道

14:26
急な東坂参道だが中間部分は水平道になっている。当然ながら、この部分だけは急な道と緩やかな道には分かれてはいない。

東坂参道の中間部分は水平道だ

14:28
「右 五丁古道」の石の道標があり、右手へ道が分かれている。ここから麓まで続く新たな、いや古い参道を再発見したのだろうか。よい、行ってみよう。

五丁古道への入口が分かれている

14:32
ふかふかの落ち葉の積もる五丁古道は、踏み固められ落ち葉もない参道よりも趣があり嬉しい道だ。この道が麓まで続いているのかと思うと、心がうきうきしてきた。

趣のある五丁古道を行く

でも、非常に残念ながら五丁古道は長くは続かずに、すぐ下で東坂参道に戻ってしまった。

14:35
後半の岩場のショートカットルートは狭く藪っぽいので、九十九な緩い道を下って行く。この東坂参道では犬を連れた散歩の人など、地元の人たちが多く歩いていて、合計20人ほどと出会った。

後半の岩場の道

14:42
岩場の道が終わると、道が左右に分かれている。左側は書写山ロープウェイ山麓駅の駐車場へと続いているが、本来の東坂参道は右側で、下った先にはかつて女人禁制時代に女人堂として栄えた如意輪寺がある。

東坂参道は右へ続く

14:46
分岐を右に行くと「壹丁」と彫りこまれた丁石や道標・石仏が並んでいる。

如意輪寺へ下らないと
全ての丁石を見ることは出来ない

ロープウェイ山麓駅からは1時間に3本しかバスの便がないが、南側のバス通りに出ると1時簡に4本もあり、1本の差は大きい。その書写バス停は如意輪寺から南にバス通りに出てから、東へ少しだ。



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