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地蔵谷道とアドベンチャールートで
黒岩尾根(摩耶山)



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平成20年4月29日(日)  メンバー 私だけ

新神戸駅〜布引貯水池〜地蔵谷道〜アドベンチャールート〜黒岩尾根〜摩耶山掬星台

2万5千分の1地形図「神戸首部」を参照すること。


登るのは初めて、地蔵谷道

六甲山でまだ歩いたことのない道は万ほどもあるだろうが、天狗道と黒岩尾根の間の谷を登り摩耶山へと至る地蔵谷道は一回下ったきりで、まだ登ったことことがないことに気がついた。谷道らしく緩やかだった記憶があるので、登りも楽勝だろうと舐めてかかったが、返り討ちに会い下山はR&Cになってしまった。

7:44
新神戸駅のガード下から歩き始める。実質的な登山口となる市ケ原まで1時間もかかるのが難点だが、街中歩きとは違い、滝あり貯水池ありで退屈しないからまだ許せる。

いつもの新神戸駅下から出発

7:51
駅北で布引谷川に架かる砂子橋を渡ると、ハイキングの始まりとしては好ましくない急な石段登りが待ち構えている。意識的にゆっくりと登ろうとするが、息が切れてくる。

ここにはエスカレーターが欲しいな

7:57
布引の滝雄滝に着いた。冬場は水量が少なく枯滝でがっかりすることが多いが、今日はまずまずの水量で写真写りもばっちり。夫婦滝も今日は寡滝でも後家滝でもなく、両者ともども仲良く落水している。

布引の滝雄滝

8:07
布引の滝から一登りで見晴らし展望台だが、春霞で遠望はきかない。いつもいる猫たちだが、今日は一匹も姿を現さない。そういえば、この前登った風吹岩にもいなかったな。六甲山の猫たちに何か異変が生じているのだろうか。

見晴らし展望台

8:13
神戸市水道局管理地に入り、一度は行きたい城山へ登り口には、普通の橋に吊橋風の装飾を施した「猿のかけ橋」に、さらに過剰の装飾を施して「猿のかずら橋」へと進化した橋が架かっている。でも、ここで足を止めるハイカーなど見たことはない。

猿のかけ橋 改め 猿のかずら橋

8:21
布引貯水池が満水になったときにしか現れない人工の滝「五本松かくれ滝」が、今日は落ちている。でも残念なことに、オニグルミの枝葉がかくれ滝を隠していてよく見えない。

オニグルミが隠す「五本松かくれ滝」

五本松かくれ滝
今日は流れてますか?

平成18年7月5日に、布引水源地の水道設備が国の重要文化財の指定を受けました。
みなさまに知っていただき、また、布引貯水池周辺のすばらしい自然環境に親しんでいただくため、布引五本松堰堤(ダム)が完成した当時にダムの放水路としてできた滝の愛称を募集し、平成19年6月に「五本松かくれ滝」を愛称に決定しました。
滝の周辺は昔から「五本松」と呼ばれており、ダムがオーバーフローした時だけ流れる滝であることからのネーミングです。

神戸市水道局

8:25
波一つなく鏡のような、満々と水を湛えた布引貯水池だ。需要と供給の関係で水位が変化するのだろうが、雪解けはもう終わっているし、今の時期は水道の使用量が少ないのだろうか。

布引貯水池


やっと登山口についた

8:59
3軒の茶屋(紅葉茶屋と櫻茶屋は店を開けていた)を過ぎて、ようやく登山口に到達した。2年前ののじぎく国体登山競技の舞台となり、ウッドチップを厚く敷き詰めた歩きやすかった丸太階段道は、チップが薄っすらと残るのみで元に戻っている。でもこの階段道は砂防ダムを高巻くためのもので、六甲山らしくはあるが困ったものだ。

ようやく山登りになってきた


地蔵谷道は堰堤と小滝の連続できつかった

9:04
天狗道取付を過ぎて、地蔵谷道の入口に着いた。

ハイキングに適したといわれるこの季節で、ゴールデンウイークも始まり、大勢のハイカーが右往左往しているはずの六甲山だが、そのほとんどはメジャーなコースしか歩かないという現実は、私のようなマイナールート愛好者には好都合というか、思う壺というか、願ったり叶ったりというか。でも地蔵谷道は、私からするとメジャールートなのだが、世間はそうは見ていないようだ。

地蔵谷道取付

9:10
そして、地蔵谷道も整った石段の道で始まる。この谷にはそれなりに落差のある流れもあり、それを高巻くように道が付けられているが、砂防ダムを高巻く道は整っているというか風情に欠けるというか、同じ高巻き道なのに表情に違いがあるのが面白い。で、この石段は「地蔵谷堰堤」を高巻くもので、昔からの地蔵谷道ではない。

砂防ダムさえなければこの石段も要らないのに

9:18
私は砂防ダム否定論者でも不要論者でもなく、人命を守るのに必要なものは自然をどのように改変しようと造るべきと思う。

ただし何事にも限度というものがあると思うのだが、国土交通省近畿地方整備局六甲砂防事務所は事業を縮小することなど自らは絶対にできない組織だろうし、人命を守るという大義名分には予算を付けやすいし、六甲山中の2,000箇所の砂防ダムが、1万、2万と増えて全ての谷がダムで埋め尽くされるまで終わらないことだろう。

うだうだとこんなことを書くのは、地蔵谷堰堤から始まり地蔵谷第4堰堤までの、幅よりも高さで容量を稼ごうとする堰堤越えにうんざりしたからだ。

なお、昭和42年に下流の市ケ原で、豪雨に伴う土砂崩れで多くの人命を失う災害があったが、その発端は世継山に造られたゴルフ場のずさんな造成工事によるもので、砂防ダムが足りなかったためではない。

砂防ダム上流の平地

9:29
一気に10分以上も経ったのは花撮りに時間をとられたためで、すたすたと歩いていたわけではない。この地蔵谷道は道と名前がついているだけあって、少し離れた渓流からの流れの音が聞こえてくるが、数回の渡渉のときにだけ水と触れ合える、見通しのきかないちょっと薄暗い道が続くというものだ。でも昼なお暗いという不気味な谷道ではなく、それなりの明るさがあり、真夏なら涼しそうなルートだ。

左手からの渓流の音を聞きながら

9:33
左岸を登ってきたが、ここで右岸側に渡る。水量は少なからず多からずで、不安定な飛び石伝いに靴を濡らすことなく渡ることができた。でも、大雨の降った後などは、靴を濡らさずに渡渉するのは困難なところだ。

数回の渡渉が待っている

9:42
きつい登りだ。これも地蔵谷第二堰堤の高巻き道で、六甲山の谷歩きでは堰堤越えは避けられない。

地蔵谷第二堰堤越えの急な登り

9:46
砂防ダムを越えた先は、渓流から離れた風情に欠けた真っ直ぐに延びる道だ。直線ばかりの砂防ダムの図面ばかり引いている設計者が、地図の中に定規で引いた線をそのまま道にしたみたいなそんな感じがする。

地蔵谷第二砂防ダムの上流

9:49
この登りは、小滝越えのようだ。自然の地形に逆らわずに通された線形が山登りの雰囲気を盛り上げ、同じようにきつい登りだが心地よささえ感じる。

小滝を高巻く道

9:51
道は明確で、分岐する道も合流する踏み跡もなく、マーキング愛好者の魔の手から逃れているのか、赤や黄色のビニールテープを見かけることはないが、公設の道標は所々に立っている。

またこの地蔵谷道がメジャールートであることを示す神戸市119番プレートが、道標の天辺に取り付けられている。でも、こんな谷道で携帯が通じるはずはないと思っていたが、妻その1からの安否確認の電話が入りびっくり。

所々に道標が

10:02
下流側は優雅な斜瀑、上流はまさに渓谷美といった風景だが、残念ながら両者とも私と一緒には写りたくないようで、その間の一枚岩の滝の落ち口を渡るところをパチリ。

滝の上流で左岸へ渡る

10:05
左下を流れる渓流には小滝が連続し、流れの中をジャブジャブと遡行すれば、道歩きとは違う視線から地蔵谷を楽しめそうで一度やってみたいが、その機会は多分ないだろう。

ここまで誰にも会わなかったが、花の写真を撮っていると二人・単独と合計3人が追い越していったが、その3人以外に地蔵谷道では誰にも会わなかった。

渓流近くを行く

10:24
またまた砂防ダムへの登りだ。砂防ダムはまだ見えず、石段の急な道でもないが、定規で引いたような情緒のない直線道なので間違いない。

地蔵谷第三砂防ダムへの登り道

10:33
この地蔵谷の上空を砂防工事索道が横切る地点が4箇所ほどあったが、いずれも簡単な囲いがあるだけで、もしも上空から資材が落下したら屁のツッパリにもならない。

また、落下物は真っ直ぐ下に落ちるとは思えず、囲いが小さすぎるが、これまでにその種の事故は聞いたことがないので(ツェンテイクロスの古いコンクリートホッパは索道から落ちたもののように見える)問題ないのかもしれない。「頭上注意」の案内板もあるが、荷物が上空を通っているのを確認できた時点で、すでに危険地帯の真っ只中にいるのではないか。

上空を索道が横切っている

10:44
左岸から右岸に渡渉し小滝脇の急な岩場を登るという、写真を撮ったら面白そうな場所あるのだが、どうしても満足するものが撮れない。私が一緒に写っていなくては意味がなく、10分ほども試行錯誤したがうまくいかない。仕方がないので、前から登り切るところで我慢した。

セルフポートレイトは難しい

10:46
標高470mほどの地点で谷が二手に分かれ、右手奥には飾り気のないコンクリート打ちっぱなしの砂防ダム、左手奥には表面に石を張った薄茶色の砂防ダムが見えて、地蔵谷本流は左俣で右岸をそのまま進む。

10:49
石張りの平成10年完成「地蔵谷第四砂防ダム」は副ダムを伴ったもので高さは18mもある。こんな山奥の砂防ダムに見た目だけの環境調和なんかに無駄な金を使うことが信じられないが、写真写りのよいことは認めてあげよう。

副ダム下流側左岸に平地を設けて、ダムからの落水を滝に見立ててのハイカーの憩いの場(ベンチなどはないが)にしようとしているようだ。

地蔵谷第四堰堤


もう大きな砂防ダムはないぞ

10:58
もともとの地蔵谷道なのか、はたまた砂防ダム工事で付け替えられたのか、定規で引かれたような道で面白くない。

普通の山行記録は、好展望地や分岐点などの特異点の写真を多用している。でも自画自賛だが、この播州野歩記では、写真を撮る価値もなさそうな普通のなんてこともない道の様子を紹介し、そしてそこに迷モデルを配することでより臨場感を増し、まるで読者が自分で登っているかのように仮想体験できるところが人気の元なのかと思う。

もしも私が中年おっちゃんではなく、見目麗しいお嬢様なら全国区の人気サイトになっていたかもしれないなと、非常に残念で仕方がない。

普通の何も特徴もない道

11:02
左岸から右岸へと渡ったが、ここまで来れば水量はしれており増水時にも問題はないだろう。でも、下山時にここで苦労するなら引き返して尾根道なりに下山路を変えるのが賢明な判断だ。

最後の渡渉ポイントだったかな

11:05
下の写真、どういう状況なのか忘れた。ヤブツバキの落花が多く綺麗とか、谷がこんなに浅くなってきたとか、谷が二手に分かれることとか、この辺で渡渉したとか、そんなことを伝えたかったのではないかと思う。

おそらく、谷が浅くなってきたよと撮ったのでは

11:10
いつの間にか左岸側を歩いているのが不思議だ。ここから先は小ぶりな砂防堰堤がいくつか現れるが、道自体が高い位置に付けられているので高巻くこともなく、すいすいと通過できる。

小堰堤その1

11:13
おかしい、小堰堤その2では右岸側を歩いているが、どこで谷を渡ったのか記憶がない。堰堤の上で下流側を覗き「ウワー、小さいのに高いなー」と驚いた記憶があるので右岸側にいるのは間違いなく、流れのない谷を何の気なしに渡ったのだろう。

小堰堤その2 小さくても高い

11:16
岩がちの道を行く。3分毎にセルフポートレイトを撮るとは、大分疲れてきて休憩代わりか、登るのに飽きてきての気分転換か、多分前者だと思うが登ることに飽きてきているのも間違いない。

こんなとこが現れたら地蔵谷道の終わりに近い

11:19
三番目のそして最後の小堰堤でとうとう座り込んでしまった。飲料水を飲もうとしてうっかりとペットボトルを落としてしまったが、堰堤から落ちることもなくセーフ。ちなみに私は昔から飲料水はアクエリアスと決めているが、近頃はカロリーオフしかなくエネルギー補充の役に立たなくなり困ったものだ。

小堰堤その3 もうあと20mほどで地蔵谷道はお終い


アドベンチャールートで黒岩尾根

11:21
長かった地蔵谷道も、私の足にかかれば2時間17分で片付いてしまい、これ以上遅く歩けたのなら自慢が出来ると思う。

ここからはアドベンチャー(冒険)ルートとなり、道標は腐り地に落ちていたが、右は天狗道へ、左は黒岩尾根へ至る。本日の最終目的地兼下山口の摩耶山掬星台は、右へ天狗道へ出るのが近いが、歩いていない黒岩尾根へと左に進む。

ここからはアドベンチャールート

11:25
いきなり行く手を岩に木に塞がれ、真にアドベンチャーの名に恥じない出だしだ。こんな道のようで道ではないようなルートで黒岩尾根まで行かなくてはならないのかと思うと、引き返したくなってきた。

邪魔な岩だな、木も邪魔だ

11:31
道らしくなかったのは初めだけで、その後は山歩きの雰囲気抜群の私好みのルートが続き、この先はどうなっているんだろうと楽しくなってきた。

楽しい道が続く

11:34
黒岩尾根へ登らなくてはいけないのに、どんどん下っていく。冒険者を甘やかす鎖場が数箇所あり、必要もないのに無理からに全体重を預けて下ってみたりして、余計に疲れてしまったりもする。

普通なら使う必要な全くないが
使うとことで冒険者を鍛えてくれる鎖場

11:35
さらに下っていく。登り返しを思うと、どこまで下るのか心配にもなってくる。

これは谷底まで下るんだろうな

11:40
鎖場をもう1本全力でこなし、とうとう谷底まで下りてしまった。そこには次なる冒険への体力回復ポイント、ベンチが設けられていた。

冒険者の休息所にてゴクゴクゴク

11:43
重くなったお尻を、意志の力でベンチから無理やり引き剥がし山行再開。そしたらいきなり鎖場だ。それも何連も連なっている(6連だったかなる)。

でも疑問に思うのは、何でこんな足場がしっかりした絶対に滑りそうもない、そんなに急でもない場所に鎖場を設けたかだ。このアドベンチャールート整備の仕様書を書いた人は、ハイカーを舐めているというか業者の仕事量を増やすことしか考えていないというか、いずれにしろ山歩きなどしたことがない人なのだろう。

ウホォホーイ、今度は登りの鎖場だ
でもここに鎖はいらない

11:48
鎖場遊びが終わるとまた快適な道に戻る。時々見える黒岩尾根はまだ遠く、このアドベンチャールートにはまだ残されたイベントが待ち構えているのではと、わくわくしてきた。「あれ、ルート設計者の思う壺にはまり込んでいるな」。

いい感じの道が続くが、誰も歩いていない

11:51
右側の雑木林の急な狭い切り開きに鎖が張ってある。正面にも普通に道が続いるが「急な道と緩やかな道」の分岐点のようには見えず、とりあえず鎖場に挑むことにする。

この鎖場も要らないが
なかったら登る人はいないだろうな

11:58
長い鎖場を登りきったら、そこは展望台だった。天狗道脇の展望所にあったのと同じ、丸太にステンレスを埋め込んだ方位盤があり「こだまの丘」という(丹波霧の里「摩耶山上に向う谷と尾根」より) 。案内板があるのだが、表示はすでに消えうせてしまい読むことができず、そのときに展望台の名前が分かっていたら「ヤッホー」と叫んでいたのにと残念だ。

そしてもうひとつ残念なことに、周囲の木々が伸びてしまったのか、全開の眺望は得られない。ここで昼食にしてもよかったのだが、展望のない展望台では少し寂しいので掬星台まで我慢することにした。

「こだまの丘」展望台

何でこんなものが、展望台にはステンレス製のいまだにピカピカと光り輝く風向計が、丸太3本の架台の上に据え付けられている。神戸市なら絶対に風見鶏にすると思うので、この愛想のないシンプルな風向計は国土交通省の所轄のものに違いない。

南西の風が吹いているのかな

12:10
展望台から下りて少し登ると、またまた連続する鎖場が現れた。ここは鎖があったほうがよいかなと思わないでもないが、土台のコンクリートブロックが崩落して、鎖が岩に張り付いてしまい用をなさない。そのおかげで楽しい岩登りが出来たのでよしとしよう。

使えない鎖場だ

12:13
アドベンチャールートは、黒岩尾根が近づいてくると普通のどこにでもあるような道になってしまう。黒岩尾根から地蔵谷道を下るハイカーは稀で、わざわざここから天狗道へ回る人などいるわけもないし、このアドベンチャールートの面白さを味わえる幸せなハイカーは少ないのに違いない。

もう直ぐ黒岩尾根かな

12:18
黒岩尾根に着いた。地蔵谷では3人しか、アドベンチャールートでは誰にも会わなかったのに、数分間の休息中に何人ものハイカーが行き来する。

黒岩尾根に着いた

12:26
天狗道と並ぶメジャーな黒岩尾根は、辿ってきたルートに比べたらまさに大名道で、こんなのを歩いて面白いのかと突っ込みたくなる。でも黒岩尾根を歩いてみたら、きつい長い登りの末にやっと辿りついた緩やかな尾根で、ほっとするところだ。

黒岩尾根もこの辺が終盤だ

12:35
本日の最終目的地兼下山口の摩耶山掬星台に到着。明日は仕事があるし、地蔵谷道とアドベンチャールートだけで満足できたし、まやビューライン夢散歩で下りる前に恒例の展望台でシェーを執り行う。

摩耶山掬星台でシェー


地蔵谷道で出会った花たち

アケビ

ヤブツバキ

モチツツジ

ニガイチゴ

スミレ

クサイチゴ

ニョイスミレ

シロバナウンゼンツツジ

コバノミツバツツジ



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