そうめん滝キャンプ場、木馬道、鍵谷池
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平成26年12月30日(月) メンバー 私だけ
神姫バス上砥堀バス停〜そうめん滝キャンプ場〜木馬道〜須加院別れ〜鍵谷〜鍵谷池〜神姫バス仁豊野バス停
奥須加院のため池の名は
姫路市街地の北に横たわる広峰・増位山塊の南側には多くの溜池が存在するが、北側には一つしかない(山富団地奥の天保13年(1842)に完成した氷室池は、近年になり消滅してしまった)。
その唯一の溜池の名は地形図には記載されていない。だが、播州野歩記の読者の方から、広峰神社関連の鍵堂があった谷なので「鍵の谷」、鍵の谷に造られた溜池なので「鍵の谷の池」なのではという情報を頂いた。
年末の休日に久方ぶりの広峰・増位山塊を歩いてみた。
上砥堀バス停からそうめん滝キャンプ場へ
8:12
姫路駅(北口)を7時48分に出発した、江鮒団地行きの神姫バスは、定刻から少々遅れて上砥堀バス停に到着。
バスの料金は350円と、JR播但線の姫路駅〜砥堀駅の190円の倍近く、おまけに所要時間も倍ほどかかり、交通機関としてバスを選択する余地は全くない。でも、私はバスが好きなのだ。
8:20
上砥堀バス停から南へ少し戻ると「姫路市立そうめん滝キャンプ場」の案内板が立つ分岐がある。ここから1.5q先のキャンプ場までは舗装された道で、その先から山道となる。
←この先1.5k
姫路市立そうめん滝キャンプ場
(受付)東洋冷機 TEL079-264-0054 上砥堀自治会
8:28
キャンプ場への道に入り少し登ると、道路右下の住宅地の中に、こんもりとした草木の茂る膨らみがある。姫路市内最大の石室を持つ「権現山」古墳だ。
屈まなければ入れない古墳が多いが、ここの羨道は高さが3m程もあり飛び跳ねても天井に手が届きそうにもない。玄室には巨大な石材が使われていて、築後千年以上も経つだろうにその姿に歪みはなく、この先何万年でもこのままの姿を保ちそうだ。この地を治めていた大王の墓にほかならないだろうが、他の古墳と同じく盗掘にあったのだろう、玄室には石棺も何もない。
道路際と羨道入り口近くの2か所に、同じ時期に建てられた解説板があるが、その内容がだいぶ違う。
権現山古墳
昭和48年4月6日付け姫路市指定重要有形文化財(史跡)に指定。
横穴式石室古墳としては市内最大規模。封土が著しく削られているが発掘調査から一辺30m余の古墳時代の方墳と考えられる。
南方に開口する片袖式の石室は全長14m。玄室は長さ3.8〜4.1m、幅1.9m〜2.0mで、羨道は長さ10m、幅1.7m〜1.8mであり、かなり長い形をしている。出土遺物は不明である。平成15年12月 姫路市教育委員会
権現山古墳
5世紀になると、大陸から進んだ文化が次々と伝わってきた。やがて6世紀に入ると横穴式石室をもつ古墳が作られはじめた。
石室は、羨道(通路)と玄室(棺を置く部屋)とからなり、全体を土でおおう形のものである。この権現山古墳は後世に古墳の上に神社が建てられたので、いくぶん低くなり東側も削られ丸くなっているが、調査してみると西側の山と古墳の間には、濠があり盛土の裾が直線であったので、もとは方墳であったことがわかった。石室は全長14mあり、市内最大のものである。平成15年12月 姫路市教育委員会
8:38
いつ来ても「本日休業」の看板が立つ「そうめん滝バンガロー」が砥堀谷川に架かる橋の向こう岸にある。廃業しているわけでもなさそうだが、いつ営業を再開するのか楽しみだ。
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8:44
「そうめん滝ハイキングコース」なるものが、砥堀谷川の左岸にそうめん滝キャンプ場まで通じていて、その入り口には「川滝龍王堂」と名付けられた巨大な岩が鎮座している。大岩の上には不動明王が矜羯羅童子(こんがらどうじ)と制多迦童子(せいたかどうじ)を両脇に従えた不動明王二童子像が祀られている。
昨夜に降った雨のためか、谷川の水量は多く対岸のハイキングコースに渡るのがためらわれ、そして濡れた下草で足元を濡らしたくもなく、ハイキングコースには入らずに車道を進むことにする。
8:49
そうめん滝キャンプ場まで続く舗装林道は1.5車線幅ほどで、大型車との離合は困難だが、普通車同士なら落ち葉の積もる路肩を使えば可能かもしれない。
9:02
この「いわたき橋」は、左岸側のそうめん滝ハイキングコースから、車道すぐ先の随願寺へと登る近畿自然歩道へと連絡するためのものだ。いわたき橋から上流には、岩盤の中の溝を流れ落ちる「岩滝??」を見ることができる。
9:04
いわたき橋のすぐ先には、緩やかな擬木階段で始まる近畿自然歩道の登り口があり、随願寺まで1.9qの道標が立っている。
私はいわたき橋を渡らず、近畿自然歩道にも入らず、舗装道路でそうめん滝キャンプ場を目指す。
9:09
上砥堀バス停から1時間弱で、そうめん滝キャンプ場に着いた。入り口には「そうめん滝キャンプ場は閉場中です立入禁止姫路市教育委員会」や「12/28〜H27.1/4休場」などと言ういう掲示がある。だが、これらはキャンプ場の施設を無断で利用することを目的とした立入を禁止しているのであって、キャンプ場の中から始まる広峰神社方面へのハイキング道や、私が行く須加院別れへと続く木馬道を目指すために、キャンプ場内を通り抜けることを禁じたものではないと思う。
ちなみにキャンプ場の名前になっているそうめん滝は、「何でも昔、姫路城の殿さんが上流から素麺を流して下流でそれを食べたことがあるといわれがあるのでこの名がついたともいわれています」(近畿自然歩道の案内より)というもので、落差は1mもなく滝ともいえないもので、いわたき橋下流のハイキングコースを通らなければ見ることは出来ない。
木馬道で須加院別れへ
9:12
キャンプ場の管理棟を過ぎると、道は二股に分かれ、左は広峰神社方面に登るハイキングコースとなっていて、木馬道方面は直進だ。
9:14
キャンプサイトの横をさらに進むと舗装道路は落ち葉の積もった地道になる。そこには道標も案内板もないが、ここが木馬道の入口だ。
9:18
砥堀谷川に沿って道が続いている。地形図では破線道もなにも描かれていないが、明確な『道』が続いている。
9:20
木馬道はすぐに砥堀谷川を渡る。その両岸には石組みが残り、その昔、筋骨隆々とした男たちが盛んに経済活動していたころは、ここに橋が架かっていた痕跡だ。
9:25
南向きの木馬道は日が差し込み明るい。そのうえ落葉樹が多く、歩いているだけで楽しくなる。まあ、ごく緩やかな勾配で、山登りの辛さが全く感じにないのが、楽しさの一番の源だったりする。
9:31
そうめん滝キャンプ場までに砂防堰堤が一つだけあったが、上流側の緩やかさが砂防設備を要しないのか、コンクリ製の大規模なものはない。でも、西側の支谷には素朴な外観だが、築くには専門的なそして多大な労力を要しただろう石積みの小規模な谷止めが残っている。
9:36
いまは好事家しか通わなくなった広峰山の木馬道だが、木々が人々の生活に直結していた1970年代位までは、薪を求める人、肥料にと落ち葉を採る人とで賑わっていたことだろう。そして、維持管理する人が途絶えた後も踏み固められた道跡は、こうして明確な道として今に残っている。
9:46
右岸側の広場だ。砂防ダムの上流側に、堆積した土砂で形作られた平場を見かけることがあるが、ここは自然に形成されもののような感じがする。ここでキャンプでもしたら楽しいかな。
9:49
道はほぼ真っ直ぐに進むが、川が蛇行しているため二度渡渉し、右岸・左岸・右岸と戻る。
9:51
これは支流の渡渉のはずだ。数分前には右岸にいたのだから、渡渉しても右岸なので、支流に間違いないはずだ。どの渡渉地点も水量は少なく、靴を濡らすことなく渡れた。
9:53
右岸側を行くと大きな石積みが道端に鎮座している。この辺りにはいくつもの道標(木札)が吊り下げられていた記憶があるが、今日は一つも確認できなかった。たしか「増広登山会」が掲げたものだったはずだが、会が消滅してしまったのかな。
9:57
本流を左岸へ渡る。水量は少なく渡渉とも言えないほどだ。
これまで増位・広峰山塊は数え切れにほど歩いてきたが、野生動物にあったことは全くない。鹿などどこにでもいるような気がするが、市川と夢前川、そして中国自動車道が鹿にとっては結界となっているのかもしれないな。
10:00
左岸側の道は、流れからちょっと離れて続く。増位・広峰山塊にはたくさんの道があり、どの道も趣があり甲乙つけがたいが、谷道の中でこの木馬道は一、二位を争う良い道だ。
10:03
流水が見られなった谷を右岸へ渡る。
10:08
谷らしさが薄れてきているが、今度は左岸へ渡る。
10:13
この辺りで上空を見上げれば、送電線が横切っているのを確認できただろうが、いかな緩やかな道とて、落ち葉に足を取られ転倒しての捻挫ぐらいならよいだろうが、運悪く骨折などした日には、わが愛する妻その1の元に帰れない可能性もある。
空と梢しかない上空を見はしないが、それでも何かないかなと左右ぐらいは見ながら歩むと、左下の谷に石積みの古の砂防施設を見出した。四段ほどのごく小規模な砂防ダムだ。この辺りの東側の尾根にあったという仙源寺(千軒寺、弥高山城)という廃寺の関連かもしれないな。
10:16
さらに、ほんの少し行くと私の背丈を超す石積み砂防ダムが構築されている。広く穏やかな谷筋ではあるが、砂防施設を必要とするほどの利用価値のあるルートだったんだ。
10:19
広峰道と交差する須加院別れが近づいてくると、これまでの明瞭な谷型地形が崩れてきて、踏み跡も落ち葉に隠されてどこを歩けばよいのか分からない。けれども大丈夫、ここまでほとんど無かったマーキング類が現れ道案内してくれる。
10:23
少し急になって来て、そうめん滝キャンプ場から1時間と少しで須加院別れに到着した。
かつて、ここには何枚かの私設案内板が立木に架かっていたのだが、今は一枚も残っていない。広峰還暦登山隊や増広登山会の皆々様が活躍していたころは、至る所に私設案内板が架かっていたのが嘘のようだな。
ただし案内板はないが木々にマーキングが巻かれている。
須加院別れから鍵谷池へ
10:24
広峰道を横切ると、そこが次の目的地たる鍵谷池へと導いてくれる北北西方向へ下る谷の下り口だ。
南向きだった木馬道の谷とは違い北向きの谷は薄暗い。そのうえに鍵谷池までの下りは、そうめん滝キャンプ場からここまでの標高差120mとほぼ同じなのに、その距離は3分の1ほどしかなく、急な谷が待っているのかな。
10:28
木馬道は広峰道の鞍部に近づくと少し急になったぐらいだが、鍵谷池への下り口は激急でトラロープまで張られている。しかしそのトラロープは風化し千切れそうになっていいる。
10年ほど前に地元の方々がこの谷道を整備した時の名残なのだが、継続出来ない活動なら最初からやらない方が増しだと、私は思う。すでにこのトラロープの成れの果ては山を害するゴミだ。
『残して良いのは思い出だけ』というのは、山道を利用させて頂く私だけではなく、整備する側にも言えるのではないかと常々思っている。
10:31
木馬道の3倍の傾斜があるはずだが、緩やかすぎる木馬道の3倍でも普通の谷よりも緩やかかもしれない。そして道は一部を除き明確な広いもので、真っ直ぐに下る谷に沿っているので迷いようがない。でもマーキングテープは必要以上にぐるぐると巻きつけられている。
10:36
水の流れのない谷を左岸から右岸へと渡ると、東側から支谷が直角に合流してくる。ここが今日一番の難所だったかもしれない。支谷の急斜面は落ち葉と湿った岩が邪魔をして私の行く手を邪魔する。
無理やり支谷を渡らずに、下の画像の上辺に張られたトラロープを目指して右手に支谷を巻いて行くのが正解だ。
10:41
雨が降った後だけ流れが現れるのかな。左下の深くえぐれた谷底には水の流れは見えない。
10:46
「広峰神社・そうめん滝 須加院」とマジック書きされた、朽ちようとしている案内板が立木に針金で括り付けられている。よく見ると木ねじもねじ込まれていて、なんだかなあの世界だ。
10:50
もうすぐ鍵谷池かな。谷形地形が薄れて消え、道らしさも薄れてきたが、マーキングが無くてもルートを外すことはない。
10:53
鍵谷池が見え始めた。だが、貧栄養湖の特徴たるエメラルドグリーンの湖水が見えるはずが、濃緑色で湖面に非ざるものが見える。どうしたのだろうか。
10:56
広い道に出た。右に行くと堰堤に出るはずだが、赤テープのマーキングは左手へと誘導しているように見える。
ここにも古い「広峰・そうめん滝 須加院」の案内板が架かっている。
10:58
鍵谷池の現状があらわになった。水など全くなく、作業用道路が池底まで続いている。改修工事の真っ最中だ。
11:03
堰堤も分断されている。池底までの急斜面を下りようと思えば下りられないこともないだろうが、滑って転んで土まみれになりたくないな。
引き返して赤テープが誘導する方へ行ってみよう。
11:18
溜池を囲む道を、須加院別れからの谷を通り過ぎると、鍵谷池奥の林の中へマーキングが付けられている。
11:23
溜池改修工事中に訪れたハイカーのために設定された迂回路を進む。とりあえず歩けるところに付けられた感じで、立木を伐って道を付けるようなことはされていない。
11:25
ほどなく、池北側の道に出た。正面に見えているパワーショベルが停まっているガードレールがある道は、池底へと続く作業道路だ。
11:28
今日は年末の12月30日、改修工事はお休みで誰もいないことをよいことに、作業道路を池底まで下ってみよう。堰堤の切り欠き部分には、鉄筋コンクリートの洪水吐でも構築するのだろうか。
11:31
今回の山行は、播州野歩記の読者からの掲示板への投稿により、この鍵谷池の名前と由来を教えてもらったのが切っ掛けで、地元の方への聞き取り調査で池の名前を再確認しようかなというのが目的だったが、事前調査で「平成26年度 農政環境土木事業(県営)実施予定箇所表」に「農村地域防災減災事業 鍵谷池 姫路市香寺町須加院 ため池」というのを見つけてしまった。
工事現場の掲示板にも「鍵谷池」の文字があり、もはや聞き取り調査をする必要もなくなってしまった。
11:32
本当はここには入れないような雰囲気が充満しているが、私のやってきた方向からは、「この先工事中につき立入禁止」とかの掲示は全くなく、なにも私は決まりを破ってはいない。
11:33
帰り際に撮った溜池改修現場の全景だ。手持ちで適当に撮ったのだがMicrosoft Image Composite Editorという、私と同年に生まれたビル・ゲイツ(アップルの創始者、故スティーブ・ジョブズも同年生まれ)が創立したマイクロソフトのフリーソフトを用いると、組み合わせる画像が傾いていようが露出が異なっていいようが、色味が違ってようが、見た目自然なパノラマ画像を作ることができ、私の愛用ソフトだ。
11:38
作業用取り付け道路の下に解説板があるのが見え、下りて見に行くと次のような内容のものだった。
9年前に姫路市と合併して兵庫県香寺町は消滅してしまったが、まだまだこの解説板では健在なのが嬉しいが、解説文の中で神官が預けた鍵は何処の鍵だったのだろうか。広峰神社本殿のか庫裏のものだったのだろうかと思い悩んだが、その当時に鍵を掛ける習慣があったのだろうか。おそらく現在の出退勤表示名札のようなものを鍵と呼んでいたような気がする。
鍵堂跡と弥高山仙源寺
この地に在った鍵堂から広峰神社まで3Kmの山道は広峰道といわれ、中世・近世はもちろん昭和初期まで神社への近道としてよく利用された。鍵堂は神官が香寺町域へ布教に通ったとき鍵を預けたお堂だといわれている。
ここから南方800mの砥堀谷川最上流に弥高山仙源寺という天台宗の寺があり南北朝時代には南朝方の赤松則祐の弥高山城としてその根拠地となった。姫路市御立の勝瑞寺梵鐘はもと弥高山仙源寺にあった什物である平成12年12月 香寺町文化協会
11:41
溜池工事現場の須加院側には、簡単なバリケードがあり「工事関係者以外立入禁止」などの立看があったりするが、私は逆に工事現場から出るだけなので問題なし。
後はお家へ帰るだけだが、須加院集落の中を運航する公共交通機関などなく、小一時間歩き続け国道312号線まで出てバス停かJR播但線仁豊野駅まで行くしかない。
12:28
50分ほど歩き、ようやくJR仁豊野駅すぐ近くの仁豊野バス停まで着いた。播但線なら姫路駅まで13分・210円、神姫バスなら29分・400円と、時間は倍以上かかるのに料金は2倍近くと、おまけに次の播但線は6分後、神姫バスは14分後と、百人中九十九人は迷わず播但線一択だろうが、私は神姫バスが好きだ。
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