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平左衛門由来の境石を探しに亀ケ壺へ



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平成20年7月12日(土)  メンバー 私だけ

河原口バス停〜亀ケ壺〜河原口バス停

亀ケ壺マップ(2万5千分の1地形図:寺前)


亀が壺、亀ケ壺、亀が坪、亀ケ坪、読み方はどれも「かめがつぼ」

姫路市公式HP:「亀が壺(の滝)」、公設道標:「亀が壺(滝)」、河原口バス停近くの公設標柱:「亀が坪(滝)」、兵庫登山会・河原谷の自然を守る会:「亀ケ壺」、兵庫森林管理署:「亀ヶ坪」、地形図:「亀ヶ壺」と、読み方は全て「かめがつぼ」なのだが、表記が全く統一されていない。

この播州野歩記では、国土地理院の地形図に記載されていたら、無条件にその名を採用することにしている。それなら「亀ヶ壺」となりそうだが、私はカタカナの小さい「ヶ」が嫌いなので、大きな「ケ」にして『亀ケ壺』とする。

なお亀ケ壺は、今は姫路市と合併した夢前町にある落差20mほどの二段の滝で、途中に滝壺(甌穴)を持つ変わった構造をしていて、最初に訪れたのは10年前で、それ以来度々訪問している。だが、道すがらにあるという背丈よりも大きな「境石」を見落としているのが癪の種で、今回はそれを探し出すのが大きな目的だ。


今日もバスで行こう

8:30
姫路駅前発雪彦山行きの神姫バスを河原口(こうらぐち)バス停で下車。雪彦山に登りそうもない二人の乗客を乗せて北へとバスは走り去っていく。姫路駅前からなら50分ほどの乗車時間で、料金は940円。

自家用車を使えば、バス停から往復で2時間ほどの林道歩きをせずに済む。だが、山行の行き帰りを公共交通機関利用へと転換済みの私には、昨今のガソリン高騰などどこ吹く風で、山行回数を減らす必要など全くない。これは距離に関係なく一乗車百円の環境定期券制度が使える神姫バスのおかげで、氷ノ山さえも往復400円で行けてしまう。

河原口バス停から雪彦山へと走り去る神姫バス
亀ケ壺へはバスの位置から右に入る

夢前町の時分に設置された公設標柱の記述内容は次の通りだが、初めてならここから2時間では滝まで行くことは絶対に不可能で、3時間は間違いなくかかる。

名勝 亀が坪滝  姫路市

河原口(こうらぐち)より、東の谷8km(徒歩約2時間)の奥地にあり宝暦12年(1762)にまとめられた「播磨鑑」にも明記され、古くから知られていた(滝高さ約20m、坪深さ約2メートル、巾約3m)
水が清らかなために、この滝に汚物を投げ入れて汚せば、たちまち水神の怒りを招き暴風雨の災難があるといわれtら。この伝承があるために、古くから山之内の各地区から番人が出て滝に汚物が入らないように見守られた時期もあった。

兵庫県自治振興助成施設 文化財標柱
この標柱は、兵庫県の競馬収益金を財源とする自治振興資金の助成を受けて設置したものです。

兵庫登山会の「亀ケ壺→」や「おおかどあゆ狩り場→」の案内板の示す脇道に入り住宅地を抜けると、鮎つかみどりが出来る平野レジャーセンターがあるが、今日は営業しないようだ。

自販機や看板に並んで亀ケ壺への地図付きの案内板が立っている。地図自体は地形図を拡大し標高順に色塗りしたもので、第2砂防ダムから滝までの1.6kmの歩行時間はどれくらいなのかという重要な情報が欠けている。

注意事項

  1. 魚止ノ滝←→亀ケ壺間は、沢登りとなり落石、スリップ事故などが発生しやすく危険である。
  2. 河原谷にも毒ヘビ(マムシ、ヤマカガシ)毒虫などが棲息しているので、対応を誤らない事。
  3. 地区以外の一般車両は、第2砂防ダム周辺から上流えの通行を禁止(安全の為)

    1. 林道基点←3.7km→第2砂防ダム←1.6kmα→亀ケ壺    5.3kmα

      河原谷の自然を守る会
      日本野鳥の会(兵庫県支部)

8:44
第1砂防ダム(地形図では上流が枯れ川になっている)下流のおおかど鮎狩り場では、予約客でも入っているのか納涼床にテーブルを並べ開店準備をしている。

一度は鮎狩りなるものをして、そして地酒でも飲みながら鮎のフルコースを食べてみたいものだが、大人一人が五千円を越す料金ではとても叶わない夢だ。

鮎狩り場を右手に見ながら林道を行く


林道歩き

8:56
林道歩きの前半戦は、河原川から幾分距離を保って植林の中を行く。林道は、乗用車同士の離合は何とかなりそうな1.5車線幅ほどで、所々には車を突っ込んだら止められそうなスペースもある。そういう所で川原に出てみると石組みのかまどがあったりして、家族そろっての楽しい屋外飲食の残り香が消えきらずに漂っているのが感じることができる。

我がファミリーにも過去にはそういうエピソードがあったが、今は悲しいかな家族全員がそろうことさえない。

林道をテクテクと

9:05
売り家の広告が所々に下がっている。敷地40坪で山小屋が付いて298万円。高いのだろうか、安いのだろうか。でもこの広告、去年も見たような記憶がある。

別荘買いませんか

9:15
おっ、これがそうか。広い庭は草ぼうぼうで見るかげもないが、芝でも張って花壇でも造れば見違えるようになるだろうな。でも、電気・電話は来ているが、上下水道は無理かな。

売れそうもないな

9:19
一度も人がいるのを見たことがない、どこかの企業の保養所?を過ぎると、前から丸太を満載したトラックがやってきた。車で来て、こんなのと狭い道で鉢合わせしたら大変だなと思ったが、『いったいこの丸太はどこから伐り出してきたんだ』。

ここまでの林道にはブルドーザーを通して均した跡があり、やけにでこぼこが少なくなっていた原因が、丸太の搬出のためとは思わなかった。

日曜日は丸太の搬出は休みかな

9:22
地形図の「河原川」の文字に挟まれるように描かれた四角 点々で表されている別荘地が、忽然と現れた。河原川左岸の造成地には点々と別荘が建ち、以前に比べて木々が増えてよい感じになってきている。開かれてからまだ日が浅くどの別荘も現役のようで、古くからの別荘地のような裏寂れた雰囲気はなく、飛び切り明るい別荘地だ。

河原川の別荘地

9:28
別荘地から少し進み林道の進路が北東に変わると、林道の両側と左手の緩やかな谷がかなり奥まで伐採されていて、これまでは静かな杉木立の中を行く道だったのが、えらく開放的な雰囲気に様変わりしている。

いったいどの辺まで伐採するのだろうか。丸太を売っても伐採費用をまかなう程にしかならないと思うが、跡地はどうするのだろうか。まさか針葉樹の再植林はありえないだろう。

河原川奥の伐採地

9:37
地形図では堰堤上流側に青々とした水を湛えているように描かれている第2砂防ダムは、実際は上流側には土砂が溜まり水の流れはない。逆に堰堤下には青々とした透明感溢れる淵があり、そこへ堰堤からの水が落ちていて、水遊びによさそうだ。

9:39
バス停から歩き始めて1時間が過ぎ、ようやく林道の車両最終到達地点までやってきた。林道はさらに奥へと続いているが、すぐに車両は通行不能となるので、この道幅が広くなり半分川原と一体化したこの場所に止めるのが懸命な判断だ。

岡山ナンバーの乗用車が1台止まっていて、ボンネットを触ってみるとまだ熱い。どうやら林道で追い越していった2台のうちの1台のようで、亀ケ壺へと向かったようだ。

第2砂防ダム上流の駐車可能場所を過ぎる

9:46
林道の状態はよさそうに見えるが、道幅の半分以上が崩れたところがある。これまでの亀ケ壺の行き帰りでは亀を見たことは一度もないが、鹿は数回見ている。鹿がいるところにはヒルもいそうだが、幸いなことに一度も見たことも咬まれたこともなく、またそういう話も聞かない。

右下に見える渓流は広浅く水量はないが、水は澄みわたり長い滑床や小滝があり水遊びには最適のところだ。お子様連れの家族なら亀ケ壺まで行こうなどとせず、この辺で遊ぶのが吉かも。

歩くには問題ない林道が続く

9:50
一つ目のコンクリート橋だ。橋の袂には百葉箱のような渓流の水位測定装置?があるが、機能しているのだろうか。橋の下は細長く深い淵となっていて水遊びには面白そうだが、一日中日陰で陰気な雰囲気のためか、ここで遊んでいる人を見たことはない。

一つ目の橋を渡る

9:55
橋の上流側には、支流からの斜瀑が落ち込んでいる。無名の滝で落差もあまりないが、この先に亀ケ壺がなかったら「河原の滝」とでも名前が付けられていてもおかしくないほどのものだ。

支流から落ちる斜瀑を見つつ

9:57
亀ケ壺へは、本流に架かる二つ目のコンクリート橋は渡らずに、その袂の崩壊一歩手前で踏ん張っている林業小屋の脇を抜けていく。

ここでスニーカーからジャブジャブ歩きようにスポーツサンダルへと履き替えしばし休憩するが、陰気な廃屋を整備して明るい休憩所にしようという篤志家はいないものだろうか。

←亀が壺の滝へ(約50分)……(公設道標)

人は誰しも明日と云う日を夢み、今日を生きている。
未だ見ぬものと出会いに人生は感動の連続でありたいー。
今日一日自然の美を満喫した自分人生に、祝福の乾杯を…

兵庫登山会

(裏面)
恋せよ若者!
愛せよ自然!

標示者
神戸市長田区三番町3丁目7
兵庫登山会 盧在植 2002.7



ようやくジャブジャブ渓流歩きの始まり

10:12
ここから始まる素晴らしい渓流歩きの第一歩としては相応しくないが、ここしかルートがないので廃屋の脇を通り抜ける。なお、左の本流に架かる二番目のコンクリート橋を渡ると、草生した林道の終点には砂防ダムがあり。その先は……「夢前町立船野から大河内町高朝田へ」…へ続く。

一番目の廃屋

10:15
ようやく待望の渓流歩きが始まった。でも、せっかく履き変えたスポーツサンダルの軟弱さが露呈してしまい、あまりの摩擦のなさに足を踏み出すのが怖い。どこかで履き替えなくては。

何度きても惚れ惚れとする渓流美だ

10:20
第一渡渉地点だ。これから滝までに何度も何度も流れを渡るし、ジャブジャブ歩いて行くし、決まったルートはないしで正確な渡渉回数は数えられないが、少なくとも10回ぐらいあるのではないだろうか。渡渉地点の流れはどこも浅く靴底を濡らす程度ですみ、ルートどりに知恵を絞れば亀ケ壺まで靴を濡らさずに行ける。でも、ジャブジャブと行くのがここの醍醐味で、濡れてもよい靴で行くに限る。

第一渡渉地点
右岸に道が続いているのが分かるだろう

10:39
天然ウォータースライダー付きの淵までやってきた。ここまでなら比較的安全に入れる。

スポーツサンダルからスニーカーに履き替えるついでに、ここで一泳ぎしようと思ってきたが、30cm水槽を持ち込み水中撮影をしている先客がいた。「ふーん、こんな方法もあるのか」と挨拶を交わし少し話したが、山登りを趣味としていなく、亀ケ壺までは行かずにここで引き返すそうだ。

スニーカーに履き替え、「よし、帰りには絶対に泳ぐぞ」と固く誓い、先に進む。写真に写っている木は倒木の枝でかなり目障りなことになっている。かつてはこの右岸側に腐りかけた木製階段があったが今はなく、頼りなさそうなロープが下がっているだけで、濡れた傾いた階段状の岩場を注意しながら越す。

この淵で泳ぎたかったな

10:49
別に流れ中を進まなくても左右のどちらかに道跡があり、辿って行くこともできるがジャブジャブが楽しい。でも楽しいのも最初だけで、道跡を行くほうが滑りもせずに楽に歩けることに気づき、宗旨替えをしてしまう私は沢歩きには向いていないみたいだ。

当然ながら沢登りは私の趣味ではなく、シャワークライミングなどする人が信じられない。だって、メガネをかけていては無理そう。

夏はジャブジャブに限るな

10:59
流れは伏流水となり消え去り、大岩がゴロゴロする川原を行く。このように伏流水になり汚れが濾されるため、清流が保たれているのだろう。

この辺にあるはずの「境石」を探すため、平面を持つ大岩があったら回り込んだりしてみたが見つからず、時間ばかりかかってしまう。

この辺の流れは伏流水になっている

11:07
今日の川原谷は、なんか倒木が目立つ。その度に跨いだり潜ったりしなければならないが、固まってではなく所々にあるだけなのでたいしたことはない。でも、倒木のため視界が塞がり谷を見通せなくなる方が、精神的な負担になる。

谷を塞ぐ倒木が時々現れる

11:11
古くさび付いて文字も読み取れない掲示板だが、標示組織名はシールを貼りきっちりと変更されている。林野庁の文書倉庫には日本国中の国有財産たる掲示板の台帳が、大切に整備され永久保管されていることだろう。国民の財産たる年金の記録も、これと同じくらいに大切に扱ってほしかった。

「亀ケ坪官行造林地」掲示板

  亀ケ坪官行造林地
一、自然を愛し森林を大切にしましょう。
一、枝を折ったり樹木にきずをつけないようにしましょう。
一、鳥獣を愛しましょう。
一、たき火・たばこに注意しましょう。
一、樹木や土石の採取はやめましょう。
    兵庫森林管理署

11:17
左岸側に残る二番目の廃屋だ。幸い道跡は廃屋から距離をとっているのですぐ脇を通らずにすむが、何かえたい知れないものが潜んでいそうでやな感じだ。一人でどこでも歩くが、いたってビビリな私にはいやな存在だ。

二番目の廃屋

11:25
小段差の先の滑床に大岩が鎮座している。下流側の丸い小岩が頭に、大岩を体に見立てると亀に見えないこともないが、どうだろう。

ここまでは通過しがたい難所はなかったが、ここからは少し大変だ。

亀のように見える岩でシェー
(Powered by GIFアニメ工房

11:31
右岸は垂直に切り立った岩壁、左岸は急な濡れた岩壁とゴルジュのような様相。水量の多い時に来てしまったら、左岸を思いっきり高巻くしか手はないが、普段なら太もも位までの緩い流れの中を行けば簡単に越すことができる。

ここで左岸のテープを辿って進み岩場に挑むと、進退窮まってしまうので止めといた方が懸命だ。昔はここにも固定ロープが張ってあり何とか通過できたが、今は怪しいツタが絡めてあるだけだ。

ジャブジャブ進むしかないゴルジュ

11:39
写真のすだれのような滝が行く手を塞いでいる。ここも踏み跡は左岸に付けられているが、どうしても私には越えられない段差があり、困ってしまった。

11:52
10分ほど左岸を挑戦したがどうにもならず、右岸側に狙いを替えるとあっけなく越えることができた。ただ、滑りにくい渓流シューズならどちら側もヒョヒョイと簡単に越すことができると思う。

最後の難関すだれ滝(右岸側がお勧め)

12:02
なんかやけに時間がかかったが、無事に亀ケ壺に到着。本日は水量がいつになく少なく迫力に欠けるが、これぐらいのほうが遡上しやすい。

水量少ない亀ケ壺


雲行きが怪しいし、帰ろう

12:23
とりあえずお昼ごはんを食べようと、シートを広げ食べかけたら、なんか薄暗くなってきて、遠雷の音まで聞こえてきた。いやだなと思いつつ食べ続けると、ポッと雨粒が。

食後は、二段の滝の間の甌穴や落ち口まで登って、あんなことやこんなことをとしたいなと計画してきたが、全てキャンセルし帰ることにした。

本当の土砂降りなら引き返さずに、たとえ車で来ていても山越えをして市川町へ下るほうが安全だが、そんなに降ることもないと判断し、見逃した境石のこともあり、戻ることにした。なお、亀ケ壺を越えて十三廻りから市川町への記録は亀ケ壺から十三廻り、そして鶴居駅へにある。

13:07
急いで下山して行くと、天気は回復しだして日差しさえ注ぐようになってきた。これなら滝で遊んできても大丈夫だったかなと思うが、もう引き返す気にはなれない。

気温は30度を越えて暑いが、水の中をいくと涼しく感じる。

天気は回復してきた

13:12
登るときには見つけられなかった「境石」が、なぜか簡単に見つかった。場所は天然ウォータースライダー付きの淵から上流に10〜15分ぐらいで、高さ2mを越える岩に文字面は流れと平行に右岸側を向いて刻まれている。

コケが生え草も生えているが、深く刻まれた文字は鮮明で容易に読み取ることができる。

境石(マウスを乗せると)

    是ヨリ北字亀ケ坪
     左右見通シ
      十一ケ村入會山
          境石

神河町新野の播州こうじやさんの郷士紹介のHPの、上月平左衛門略伝 浦上義一著の六に、この境石に関すると思われる古文書とその言われ伝説などが、よくここまで調べたなと感心するほど詳細に述べられている。(現在、該当HPは削除されています)

承応元年(1652年)に記された亀ケ坪山の領有権・入会権に関する覚書が今に残っていて、この境石から奥は夢前町内にもかかわらず、山を越えた新野村外十ケ村の所有となった経緯と、かかわった新野村大庄屋上月平左衛門の功績が記されている。

13:31
ウォータースライダー付き淵を通過。天気も良くなってきてので、ここで行水をして汗を流してもよいのだが、15:03のバス(次は15:58)に間に合いそうなのでパス。亀ケ壺までやってきて一度も泳がずに帰るのは初めてだ。

14:45
足早に林道を歩き通し、河原口の神社で汗まみれの服を全部着替えて河原口バス停に着いた。行きは3時間30分かかったが、帰りは2時間20分とほぼ標準タイムだった。




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